これまでの人生が試される場所 大人こそキューバへ行くべき8つの理由

Kriangkrai Thitimakorn(Getty Images)


テスト5:外国人観光客との会話で試す国際センス

キューバでの「アメリカ」とは「ラテンアメリカ」のことであり、米国は「ステイツ」と呼ばれる。そしてご存知の通り、革命で成立した現在のキューバは反米だ。ハバナの「革命博物館」を筆頭に米国に対する風当たりは強く、壁の落書きや町の看板レベルでも徹底している。

日本の団体客がそう来ないこともあり、オプショナルツアーの参加者は多国籍になる。ビニャーレス渓谷行きのバスに乗り込むと、ガイドは流暢な英語で参加者の国籍から話を始めた。

「イギリスは? カナダはいる? ステイツは?」

すると、わざとらしくこっそり挙手した米国人が返す。

「ここにいるが、どちらの政府にも内緒にしてくれ」

ガイドも含めて車内は爆笑に包まれた。オバマ政権時、米国とキューバの国交は54年ぶりに回復したが、現在のトランプ政権ではまたしても雲行きは怪しい。この微妙な状況を踏まえたブラックジョークだ。次に食事の際、イギリス人がこの米国人に渡航の手段を尋ねた。

「いまのところはいくらでもあるが、CIAには黙っておいてくれるかな?」

笑いと共に、話題は米国とキューバの関係に移る。イギリス人はある有名大学の教授で、経済制裁の是非について持論を語った。米国人も実は近い職業のようで、短くも的確な返答を続けている。だが、テーブルが「白熱教室」になりかけた際、いたずらっぽく呟いた。

「でも、経済制裁はこの渓谷の美しさに影響しないと思うよ」

キューバ ビニャーレス渓谷
何事にも動じない世界遺産・ビニャーレス渓谷

観光客同士の会話は一般的だが、場所によっては知的センスの試験会場に早変わりする。キューバで欧米人たちの会話に耳を傾けることは、自身の国際感覚を測る指針にもなるだろう。

そして一方で気づく。日本から来た我々に、キューバを語る言葉と知識はあるのか。日本で毎日放送されている「ニュース番組」は、このような場で渡り合える知識を授けてくれない。なんとも不甲斐ない状況ではないか。

テスト6:真のキューバ音楽を追い求めよ

24時間営業のコンビニはなく、ネットの常時接続も困難なハバナに夜が訪れる。キューバといえばキューバ音楽。まずは旧市街に繰り出して、観光客向けのバンド演奏を試してみよう。店先から流れる音色に惹かれたら、ふらりと入ってモヒートを一杯飲めばいい。ダメなら次の店だ。

音楽好きならそのうち、演奏の善し悪しに気づくだろう。「観光客向けは生ぬるい!」と感じたら、旧市街を離れてサンミゲル通りを西へ。20分ほど歩けば、右手にライムグリーンの壁が見えて来る。国営のレコード会社「エグレム」のスタジオ、あの「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のアルバムが録音された場所でもある。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」にも登場する聖地

スタジオ併設のライブハウス(写真右)では、毎日夕方からライブが開催される。サルサやタンゴなどジャンルはさまざまだが、出演者はいずれもプロミュージシャン。客層は地元民が中心で、飛び入りのダンスや声援なども本格的だ。
次ページ > 旅人の内側にも静かな革命を起こしてくれる国

文・写真=オカダカヅエ

ForbesBrandVoice

人気記事