「時短」を想起させる言葉でもあるが、本連載では、時間をかけるべきものには時間をかけたい、という視点で毎日の生活がより豊かになるアイテムを紹介する。4回目は、「ブリコラージュ」のシュトーレン。
日本にクリスマスケーキが生まれて、100年以上が経つ。きっかけは、「不二家」が作ったと言われている。
1910年、横浜・元町に「FUJIYA」として創業した時から、クリスマスケーキを販売。横浜には外国から多くの船が寄港していたこともあり、そこで創業者である林右衛門が、外国人パティシエからレシピを学んだという。
当時のクリスマスケーキには、ドライフルーツと洋酒を使用したフルーツケーキに砂糖の衣がかけられ、アラザンという銀色の粒状の製菓があしらわれていた。
素材と製法から想像するに、その味は、ドイツ・ナウムブルク発のケーキ、シュトーレンに近いだろうか。
歴史はさらに古く、1329年のクリスマス、カトリック教会の司教への献上物として作られたものが原型と言われている。たっぷり砂糖をまぶしたケーキが、布にくるまれた幼子のイエスのように見えることから、献上物にふさわしいとされたのだ。
1500年頃からは、ドレスデンで「クリスマスのキリストパン」という名で販売され始め、現在では、毎年シュトーレン祭りが盛大に開催されている。地元のパン職人たちが集まり、毎年一つ用意するのだが、そのサイズが規格外だ。
2017年のシュトーレン祭りの様子
2000年に史上最大サイズを記録したものは、重量4.2トン。巨大なシュトーレンが馬車で市内を練り歩き、クリスマスマーケットの会場で1メートル超の長さのナイフで切り分けられる。
こうしたユニークな歴史やストーリーだけではなく、薄くスライスすることで、クリスマスまでの時間を楽しむことができるのも、シュトーレンの特長だ。
今年、シュトーレンを楽しむなら、全てのパンに国産小麦を使用する「ブリコラージュ」の一品はどうだろう。
日本でも浸透してきたからこそ、和風テイストや、チョコレート味など、豊富な種類が揃うが、今年同店が提供するのは、具材も製法もシンプルなオーソドックスなシュトーレン。
時が経つほどにドライフルーツの味が生地に染み込み、長期保存にも一役買うラム酒が芳醇に香る。赤ワインとも好相性で、食後に少量をじっくり楽しむのもいい。
高級レストランや人気パティスリーが提供するクリスマスケーキのような華やかさはないが、クリスマスを思いながら、時間が経つほどに深まる味に価値を感じる人にとっては、一番ふさわしいケーキだろう。
オリジナルボックスには、六本木にあるブリコラージュのテラス風景が描かれている。
ブリコラージュ(bricolage bread&co.)の「シュトーレン2019」
価格:3000円(内税)
お問い合わせ先:03-6804-1980
住所:東京都港区六本木6-15-1 六本木けやき坂テラス1F