世界テロリスト長者番付2位、タリバンを支える「麻薬ルート」と多額の寄付金

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実際、麻薬貿易におけるタリバンの関与の拡大は著しく、今となっては「テロと麻薬の境界線」はあいまいになっている。

多くの場合、タリバンは「そこがアヘンの栽培地域かどうか」にかんがみて攻撃の優先順位を決めている、と博士は証言する。

「ときには、アフガニスタン軍の軍需拠点やバリケードに対するタリバンの攻撃は、軍事的策略に照らすと、まったく意味がわからないという場合もあります。ですが、国内の麻薬輸送にとって重要な場所はどこかを考えれば、それらの攻撃は完全に合理的なのです」

年間4億ドルを稼ぐタリバンの「麻薬生産チェーン」

シンドラー博士の話にあったように、タリバンは使える手段はすべて使う。戦略的拠点に対する攻撃、交渉、ときには賄賂でさえ払うことがある。それもすべて、未加工のアヘンを南のヘルマンド州から運びだし、国の北東部にある精製工場へと運ぶためだ。そこから、ヘロインへと形を変えた原材料が南部に戻され、世界中へと輸出される。行先は主にパキスタン、イラン、その他中央アジアの国々だ。

こうして、タリバンは麻薬の「生産チェーン」全体を運営する。アヘンを育てる農民から麻薬の製造業者、国境を越えて麻薬を密輸する取引業者まで。そのすべてが、国連の情報筋によれば、年間4億ドル(約430億円)ほどを稼ぎ出しているのだ。

この膨大な額も、実はタリバンの収入の半分でしかない。タリバンの豊かかつ多様な金融システムにはほかにも重要なカテゴリーがあり、それは鉱物、とくに銅と鉄の盗掘だ。タリバンはここでも国の天然資源に加え、支配する地域とその人々を搾取して、可能な限り多くの利益を吸い上げようとしている。

誘拐と身代金回収も、タリバンの活動を支える収入源のひとつだ。2016年、アフガニスタンでは1673人が誘拐されたが、そのほとんどがタリバン工作員によるものだった。そして最後に、さらに大きな収入源となっているのが寄付金だ。その多くは裕福なサウジアラビアの族長や慈善家から来ている。

ニューヨーク・タイムズ紙が実施した調査によると、サウジアラビアはタリバンに多額の寄付を行っている国のひとつだという。リヤドの政府は表向きはアフガニスタン政府と国内で活動するアメリカの治安部隊を支持しているが、サウジ当局は国内の富裕層が持つ個人口座から流れ出し続ける資金には目をつぶっているのが現状だ。

文=イタイ・ゼホライ 翻訳=松本裕/株式会社トランネット 編集=石井節子

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