「これからの働き方を考える」ための3冊|クリエイターの本棚

『楽しくなければ仕事じゃない』(東洋経済新報社)


そんな対局的な書名の2冊が、共通してビジネス、ひいては人生における重要性を説くことがある。それは、他者に対する愛、すなわち、他者に対する想像力を持つことだ。干場氏は「愛とは、相手の自己中心性を想像すること」であると言い、見城氏と藤田氏は「他者への想像力をはぐくむには、恋愛しかない」と言う。

仕事ができる人とそうでない人を分かつもの。それは、お客さまであれ、パートナーであれ、上司であれ、他者に対する想像力の差、愛の深さだということを両書は教えてくれる。後者のタイトルが「憂鬱じゃなければ」であるのは、憂鬱になるくらい相手のことを考えて大切にしろということに他ならない。

「ロールモデル」「キャリアプラン」「ワークライフバランス」などを唱える昭和ビジネス教から解放されるためにお薦めしたいのは、米国のアップル本社に務めた経験があり、現在は米国、フィリピン、日本三拠点を渡り歩きながら仕事をする松井博氏による『なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか』(KADOKAWA)だ。

『なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか』(KADOKAWA)

ロールモデルを目指して走っても、ラットレース(回し車の中でクルクル回っているネズミの競争)に陥るだけ。後生大事にキャリアプランを立てたところで、子どもたちは親が理解できない職業に就く時代になっている。

苦役と解放を分けて考えるワークライフバランスではなく、「好き」と「得意」と「役に立つ」のバランスが取れることに取り組めば、仕事をもっとを楽しめるはず──。そういった、これからの働き方に対するライフハック術がふんだんに盛り込まれている。

最後に、もうひとつ。松井氏の本の中で比較的多くの紙面を割いて書かれていることがある。それは、スマホ時間をコントロールすることだ。スマホの中には、「他人との比較情報」が溢れている。メールを開けば、仕事の競争。SNSを覗くと、「いいね!」の数比べ。電車に乗っていると、以前に増してスマホに魂を奪われ、「スマホゾンビ化」した人の数が増えたように感じる。

ロールモデルを目指し、競争に勝つキャリアプランを描き、心身を壊さないように苦役と解放のバランスをとろう。もしそんな働き方に疑問を感じるなら、スマホの中の他者比較から少し距離を置き、代わりにできた時間で前(未来)を見るようにすれば、あなたの人生はさらに豊かなものになるかもしれない。

自分の働き方を見直したい方に、ぜひお薦めしたい3冊だ。

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文=川下和彦

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