「これからの働き方を考える」ための3冊|クリエイターの本棚

『楽しくなければ仕事じゃない』(東洋経済新報社)

旅するように、本を読む。一冊の良書は好奇心を刺激し、読み手を新たな書へと駆り立てる。

この連載では、新規事業開発や広告制作を手がけると同時に、本をこよなく愛する筆者が、知的欲求を辿るように読んだ書籍を毎回3冊、テーマに沿って紹介していく。第6回は、「これからの働き方を考える」ための示唆に富んだ3冊。

私は「ロールモデル」という言葉が大嫌いだ。人のすごいと思ったところを部分的に盗んで血肉にしようと思うことはあっても、一人の理想像を設け、それをコピーするような生き方がしたいとは毛頭思わない。

モノがなく、大量生産・大量販売が求められていた時代は、できる人のコピーロボットになれば、「優秀」と言われ、めでたく食っていられたかもしれない。

しかし、自ら主体的に問題を発見しなければやりがいのある仕事にありつけない現代、思考停止のままロールモデルをなぞるように働き、量産型「金太郎飴社員」になったところで、めまぐるしい変化を前にただ呆然と為す術なく立ち尽くすことになるだろう。

ロールモデル以外にも、先行き不安な時代に「こうすれば安心だよ」と壺を売りつけるような言葉は多い。「キャリアプラン」や「ワークライフバランス」もそうだ。そんな概念に異を唱え、これからの働き方に希望の光を灯してくれるのが、ディスカヴァー・トゥエンティワン取締役社長・干場弓子著の『楽しくなければ仕事じゃない』(東洋経済新報社)だ。

女性が働くという道が今ほど舗装されていなかった時代、ロールモデルなど存在するはずがなく、自ら道なき道を行き、今につながる道を切り開いてきた干場氏の働き方、生き方は、私たちを大いに勇気づけてくれる。

例えば、「キャリアプラン」なんていらない。「プラン通りにいかないから、人生は面白い!」や、「ワークライフバランス」って、そもそも「労働は苦役か? 会社は搾取か?」という発想に立脚していないか? ワーク(苦役)とライフ(解放)を分断して考えるのではなく、「楽しくなければ仕事じゃない」などと、同氏は説く。

世間でまことしやかに語られている働き方宗教に真っ向から刀を打ち下ろす干場哲学は痛快である。

見城徹・藤田晋著『憂鬱でなければ、仕事じゃない』(講談社α文庫)

一方で、この本と真反対と言ってもいいタイトルの本がある。見城徹・藤田晋著『憂鬱でなければ、仕事じゃない』(講談社+α文庫)だ。

ビジネス書は、読んだ直後はためになったと思っても、次の日には忘れてしまっているものがほとんどだ。しかし、2011年に単行本が発売された当時に読んだこの一冊は、文学表現が鋭い見城氏のナイフに、藤田氏のビジネスに対する熱が加わり、今でも鮮明に覚えているくらい、私の脳に大切なことを焼き付けた。
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文=川下和彦

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