ビジネスの発想に役立つ「実践的弁証法」入門


この止揚するプロセスは「成長」ともいえます。「学び」といってもよいでしょう。ビジネスは、現状の「正」に対して、失敗の経験を「反」として止揚を繰り返していくことが、成功の要諦です。繰り返せば繰り返した分だけ成長するのですから、考えてみれば当然といえば当然ですね。

成長、つまり学びがあればあるほど止揚の精度も上がりますから、繰り返せばより成功率も上昇していきます。これが、失敗を利用して成長するための「弁証法的展開」です。

ザンギリでいえば、撮影機材を無駄にしないために、店の隅に置いていつでも使えるようにしておきました。そして休憩時間や閉店後に積極的に機材に触れることで、ヘアスタイルのフォトコンペに挑戦するようになりました。

目標ができることで、若手スタッフの技術が向上し、なかには優勝するスタッフも出てきたのです。コンペの結果は技術力の高さをアピールすることにつながります。つまり、理容室の広報として十分な役割を果たしたわけです。なにより、フォトスタジオの新しい活用方法が生まれたことで、スタッフ感の結束が強まりモチベーションが上がったことが大きな成果でした。

繰り返し失敗できるように、「サルベージバリュー」を計算する

成功をするためには何度も弁証法展開を繰り返す。そのためには、まずは失敗を含めて何度も挑戦をする必要があります。

しかし、一度の失敗で立ち直れないほどのダメージを受けていては、繰り返し挑戦をすることはできませんね。そこで、覚えておきたいのが「サルベージバリュー」という考え方です。

たとえば、50万円の撮影機材を買ったとしても、もし事業が失敗して3年後に半額で売れれば、マイナスは25万円ですみます。このように一定の期間が過ぎたあとに、「いくらで売却できるかをあらかじめ計算しておく」のです。

これは、シンプルにいえば、失敗したときのリスクをいかに少なくするか、という考え方でもあります。

私はアメリカ留学の際に、失敗の仕方を学ぼうと考えました。人間は何度も失敗する生き物です。それであれば、何度でも立ち上がれるための「正しい失敗」がどういうものかを知っておきたかったのです。

事実、私はそのあとも人生において何度も失敗を繰り返していますが、サルベージバリューを計算しておくことでリスクを最小限に抑え、その都度「弁証法的展開」で挑戦を繰り返しています。

編集=石井節子

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