No Cooking No Life ! 料理こそが人を育てる

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2015年2月、僕はThe Culinary Institute of America(CIA)というカリフォルリアの料理学校で開催されているハーバード大学との共同プログラム、「Healthy Kitchens, Healthy Lives」に参加しました。

これから先、治療や医療だけではアメリカの病気に対応するのが難しいため、「医者が病気の一因となる食をもっと学び、患者に食事指導をしていくべき」という考えのもと、全米から多くの医療関係者が参加し、予防医学や医食同源をテーマにしたさまざまなプログラムが行われました。

日本も含め、先進国の多くでは、現代病による死者が増えています。呼吸器疾患、高血圧、心臓病、動脈硬化、消化器疾患、不眠症、がん、筋肉疾患など、健康診断をしてこれらの疾患が見つかり、「減塩、減糖」「酒とタバコは控えるように」と指導を受けたことのある人も多いのではないでしょうか。

しかし、日頃から外食が続いていたり、出来合いの食事を食べていると、砂糖や塩の量にまで気が回らないのが現実です。家庭で食べる食事であっても、自分で作らなければなかなかその量はわからない。僕はここに多くの原因があると思います。

塩を使わずに作るカレー

Healthy Kitchens, Healthy Livesのプログラムには、講義のほか、ヨガ、メディテーションなどがあるのですが、何よりも皆が楽しんだのはクッキングでした。

僕は料理人としてこのプログラムに参加させてもらっていたのですが、他の参加者はそのことを知らず、周りの医者は僕を医者だと思ってたし、料理の指導をしてくれる先生も、日本から来た医者の扱いで、野菜の切り方から教えてくれました(笑)。

1組み15人ほどで10グループに分かれ、7皿の料理を作ったのですが、どの料理もイマイチで……。僕が作った一皿だけ美味しくできていたので、一緒に参加した予防医学博士の石川善樹(Campus for H)は、「同じレシピで同じ食材でも火入れや切り方が変わるだけで料理の味が変わるんですね!」と驚いていました。そりゃ経験と腕はあるよ、と思いましたが、彼は盟友です。


2年ほど前から不定期で、AIを取り入れたディナー「AIなのか愛なのか?」を開催している。右が石川くん。

この7皿を見ていて、いくつか興味深い点がありました。それは、どれも地中海食がベースで、保存食が含まれているということ。そして、雑穀や穀物など、いわゆる“スーパーフード”として知られる健康食材が使われていることでした。
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文=松嶋啓介

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