世界経済、近づくリセッションの足音 英独崖っぷち、米中にも異変

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世界経済が減速し、各国・地域の中央銀行は景気を刺激するため、政策金利をほぼゼロ%、あるいはマイナスの水準にまで引き下げている。

2019年も残り1カ月となるなか、この1年ほどの間にリセッション(景気後退)入りした、あるいは来年以降、その懸念がある主な国・地域をまとめてみた。

香港

6月に始まった政府への抗議行動は景気を冷え込ませ、7〜9月期にリセッションに突入した。特に観光業や小売業が大きな打撃を受けている。

英国

欧州連合(EU)離脱を巡る先行きの不透明感から、4〜6月期に四半期ベースで12年以来となるマイナス成長に陥った。視界はいまだに晴れず、仮に合意なしの離脱になればリセッション入りする恐れが強い。

ドイツ

EU最大の経済大国もリセッションの瀬戸際にある。製造業の落ち込みが続き、主要輸出品である自動車は世界的に販売がさえないためだ。

イタリア

EU域内で4位の経済規模を持つこの国は、18年10〜12月期にリセッションに陥った。生産性の低さや失業率の高止まり、債務水準の高さに政治の混迷も加わり、依然として厳しい経済情勢が続いている。

中国

リセッションとはほど遠いものの、米国との貿易戦争が続くなか、世界2位の経済大国も景気は低迷している。国際通貨基金(IMF)は成長率の見通しを、19年は6.1%、20年は5.8%に下方修正した。18年の6.6%からさらに減速することになりそうだ。

このほか、トルコ、アルゼンチン、イラン、メキシコ、ブラジルといった国々も、経済的な苦境が深まっている。

IMFの予測では、世界経済の19年の成長率は3%にとどまる。これは、08年に始まった金融危機以降で最も低い伸びになるということだ。

少し脱線すると、世界中の中央銀行が金利を低く抑えようとしていることもあって、欧州諸国や日本、米国といった豊かな国では現金の退蔵(いわゆるタンス預金)が増える傾向にある。

ロシアや中国、インドといった新興経済国はその逆で、国内総生産(GDP)に対する家計の現金の比率は下がってきている。

最後に米国の状況を確認しておこう。株式市場は相変わらず好調でS&P500種など主要な株価指数は連日、過去最高値を更新している。経済統計は一部の指標ではなお堅調だが、ここへ来て景気減速の兆しもみられる。

例えば、消費者支出や雇用者数が底堅い半面、製造業の活動は縮小しており、物価上昇率もかなり低い水準にとどまっている。

また、貿易を巡る不確実性が引き続き市場の波乱要因になっており、ウォール街は、景気のてこ入れやイールドカーブ(利回り曲線)への圧力軽減のため、連邦準備制度理事会(FRB)が追加の刺激策を講じるのではないかと、その動きを一段と注視するようになっている。

米国債のイールドカーブは5月以来、逆転しており、この「逆イールド」はかねてリセッション入りの前触れとされてきた。

米景気は何年も拡大を続けてきたが、世界的に景気が減速しているだけに、いずれ後退局面を迎えるのは避けられないという見方も根強い。ブルームバーグ・エコノミクスによれば、米国が向こう1年以内にリセッション入りする確率は11月上旬時点で26%となっている。

編集=江戸伸禎

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