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不安障害や気分障害を抱えた人は、なぜネガティブな考えや感情から逃れられないと感じることが多いのか、その理由が解き明かされた可能性がある。欧米の研究チームがこうした患者の脳機能画像の大規模な分析を行い、その成果を発表した。

研究チームは、気分障害もしくは不安障害と診断された成人の患者と、健康な成人の脳の活動を比較した過去の研究226件から、9000点を超える脳スキャン画像を集め、分析した。この種の調査研究としては過去最大規模のものだという。

その結果、患者グループでは、脳の領域のうち、これまでの考えを止め、新しい考えに移る働き(論文では「認知コントロール」と呼ばれている)を担う領域の活動が異常に低く、「情動的な思考や感情を処理する」領域は活動が異常に活発だったことが分かった。

活動が異常に低かった脳の領域は、下前頭前・頭頂葉皮質、島皮質、被殻などで、これらは全体として、考えや感情のコントロールに影響を及ぼす脳回路を構成している。一方、活動が異常に活発だった領域には、「戦うか、逃げるか」の反応を担う左へんとう体が含まれる。

分析結果を総合すると、不安障害や気分障害の患者の脳は、不健全な状態に陥っていることが示唆された。つまり、彼らの脳は、一方では感情的思考をコントロールするのが難しく、他方では同じことを繰り返し考えたり、ネガティブな感情にとらわれたりしやすいようなのだ。

論文の統括責任筆者であるブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のソフィア・フラングー教授(精神医学)は、今回の研究成果について「気分障害や不安障害の患者がネガティブな気分から抜け出せなくなっているようなのはなぜなのかに関して、科学に基づく説明を与えるもの」だと述べている。

また、「ネガティブな考えや感情を止めたり、切り替えたりできないと訴える患者の経験を説明するものでもある」としている。

研究で対象とされた気分・不安障害には、大うつ病性障害、双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、複数のタイプの不安障害などが含まれる。米国ではどの年を見ても、成人の5人に1人(約5000万人)がこうした障害を抱えている。

研究チームによると、今回の研究では子どもや高齢者の画像データは意図的に排除している。そのため、同じような結果がこうした年齢グループにも当てはまるのかどうかは不明だという。

また、脳スキャン画像の分析は主に相関に基づくものであるため、因果関係は分からず、いわゆる「卵が先か、鶏が先か」という問題にも答えられない。

つまり、脳の機能異常が行動や環境の影響といったほかの要因に先だって存在したのか、それともその結果として生じたのかは判断できない。

チームは今後の研究に関して、神経刺激や標的療法などによる症状への介入とも関連させながら、今回の研究結果の中でも取り上げた脳回路での収束の仕方などを調べることになるとの見通しを示している。

「これらの共有された脳の表現型は、一般の人の臨床結果の向上や情動障害の減少もしくは予防を目的とした介入の標的として役立つ可能性がある」とチームは今回の成果の意義を説明している。

研究は米国立精神衛生研究所(NIMH)の助成金を受けて行われ、論文は米国医師会(AMA)の精神医学専門誌「JAMAサイキアトリー」に発表された。

編集=江戸伸禎

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