ビジネス

2019.11.29 12:00

どん底からスタートした起業家の「世界を代表する食品メーカー」への挑戦


「当時はみんなに『終わったな」と言われましたね。なんで飲食店なんだ、と。個人的にはレストランだけで収益をあげたいわけではなく、お客さんが「美味しい」と感動する体験を創出できるまでは商品をつくっても上手くいかない。と。ですから、研究開発を重ねるために美味しいと健康を両立したレストランをつくった。若松もシェフとして、新しい可能性に賭けてみたかったようで、すぐ仲間になってくれて有り難かったです」(杉岡)

結果的に目標としていた「1000万」を集めることができ、2018年6月にオープン。フルコースで約600kcalのヘルスケア創作料理を提供するレストラン「倭」が誕生した。



「倭」では調味料や添加物を極力使用せず、食材本来の味を最大限に引き出した料理を提供することで、美と健康を内側から整える体験を顧客してもらうほか、自分たちが自信を持って「これだ!」と思える商品の開発に取り組んでいた、という。

「為末大さんが来店した際に、為末さんのお子さんにレストランで提供していた“人参のピューレ”を少し持って帰ってもらったんですよね。そしたら人参嫌いだった、お子さんが人参を食べるようになった。これは例のひとつですけど、こうした事例がレストランを通じてたくさん生まれていたんです。その経験からプロダクトアウト的な発想でベビーフードブランド『Mi+ミタス』を立ち上げました」(杉岡)

8ヶ月で3万5000食を販売

「Mi+ミタス」が手がける離乳食は現役ママの小児科医が、発達に必要な世界基準の栄養素を監修するほか、現役ママの管理栄養士が栄養を満たす食材を選定し、熟練のシェフが調味料、保存料、添加物を使わずに作られている。

また、子どもの月齢に合わせて、固さ・大きさ・食材がカスタマイズされた離乳食を自宅に届くようになっている。価格は1カ月ごと20食入りで1万1980円(税別)、2週間ごと10食入りで5980円(税別)だ。



「離乳期は短いけど、ママはすごく気を使う。今まで考えたこともなかった離乳食の情報を有象無象のウェブの情報の中から調べて作らないといけない。外出用に瓶詰めの離乳食はありましたが、家食用の離乳食はなかった。それがウケたんだと思います」(杉岡)

2019年4月の発売開始から8ヶ月で3万5000食を販売。「Mi+ミタス」の離乳食を食べさせておけば安心という信頼感が口コミで広がったほか、LINE@やInstagram などを使って乳幼児の食事相談などにも対応した結果、顧客が増えていっているという。

「僕たちは卸しもいないし、リテールもない。唯一の強みがCRMで、そこにすごく人を張っています。そのため、ママから「こんな商品ないですか?」「こんな商品を作れないですか?」という声が入ってくるんです。そんなユーザーニーズに応えるために商品の企画、開発を今後も行なっていきたいと思います」(杉岡)

文=新國翔大 人物写真=小田駿一

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