ビジネス

2019.11.29

どん底からスタートした起業家の「世界を代表する食品メーカー」への挑戦

MiL代表取締役社長の杉岡侑也

私たちの生活と切っても切り離せない関係にある“食”。みなさんは普段、どれほど健康を意識して食事を摂っているだろうか?

「You are what you eat(あなたはあなたの食べたものでできている)」といったことわざがあるほど“食”は健康と密接に関わるものだが、忙しさのあまり、ついついコンビニ飯を食べたり、ファストフードを食べたりしてしまいがちだ。

そうした中、“自分らしい人生を食から実現する”をミッションに掲げ、ヘルスケア×フードテックを軸に次世代型食品メーカーを目指すスタートアップがいる。それがMiLだ。

同社は、美と健康を内側から整える料理をメインとしたレストラン「倭」、サブスクリプション型ベビーフードブランド「Mi+ミタス」を展開している。MiLにはMTG Venturesのほか、元陸上選手の為末大氏が運営するDeportare Partners、予防医学研究者で Campus for H 共同創業者の石川善樹などが投資家として名を連ねる。

「テクノロジーの発達とともに、豊かな時代になったからこそ、いま一度“食”と自分(人生)のあり方を見つめ直して欲しい。そうすることで、食はより豊かな、自分らしい人生を実現する最高のパートナーになってくれるはずです」

MiL代表取締役社長の杉岡侑也は「食事の重要性」について、このように説く。実は杉岡にとって、MiLは3社目の起業となる。過去に立ち上げた会社で手がけていた事業はキャリア支援。全く異なる事業領域から、なぜ彼は妻とシェフの3人で「フード×ヘルスケア」を軸にしたスタートアップを立ち上げることにしたのか。

「僕の人生はどん底からスタートした」の一言から始まった、彼の挑戦に迫る。

会社ではなく、自分を探す

20代でありながら、3社目を起業している杉岡。優秀な人の成功譚にも聞こえるが、キャリアはフリーターとしてスタートさせている。大学受験に失敗し、高卒でフリーターに。5年間、さまざまなアルバイトを転々とする日々を送っていた。

22歳の頃、些細な縁で大阪から上京し、東京で社会人として働くことになる。スキルも学歴もない。何の後ろ盾もない杉岡は「とにかく成果を出すしかない」という思いで仕事に取り組んだという。

「仕事は努力したら、努力した分だけ成果となって返ってくる。それがすごく面白くて。どんどん仕事にハマっていったんですよね」(杉岡)

何もない状態から、社会人として一定の成果を出せるようになった杉岡。その経験から、“人の可能性は無限大である”ことを証明するために選択した手段が起業だった。

「キャリア支援と食。事業領域は異なりますが、事業の根底にある思いは創業時からずっと変わっていなくて。テクノロジーによって生活が豊かになったり、便利になったりして、ライフスタイルがリッチになってきている時代だからこそ、人生をどう生きるか。Being(ビーイング)が大事になってきている。インターネットで便利になった反面、新たなジレンマが生まれてきているわけです。個人的にはそのジレンマの解消に興味があり、一番最初に事業としてフォーカスしたのが“働く”ということでした」(杉岡)

そんな思いから、杉岡が2016年に立ち上げたのが、Beyond Cafeだ。同社が手がけた事業は大学生のキャリア支援だが、世間一般がイメージするキャリア支援とは一味違う。
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文=新國翔大 人物写真=小田駿一

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