イスラエルの「民営スパイ企業」社員がFBを提訴した理由

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イスラエルのスパイウェア企業「NSOグループ」の社員らが、フェイスブックを相手取った訴訟を起こした。社員らは個人のフェイスブックアカウントが無効化され、プライバシーが侵害されたと訴えている。

この動きは、フェイスブックが10月末にNSOを提訴したことへの報復と見られる。フェイスブックは傘下のワッツアップが、NSOにハッキングされ、個人情報を盗まれたと訴えていた。

NSOの社員らは訴状で、彼らがフェイスブックの規約に一切、違反していないにも関わらず、NSOと関連を持っているという理由だけで、アカウントの停止措置を受けたと主張した。これは、フェイスブックのサービス規約に違反する行為だと社員らは指摘している。

テルアビブ裁判所に対し、社員らはフェイスブックがイスラエルの個人情報保護法に違反したと訴えた。フェイスブックは個人データを不正に利用し、彼らがNSOと関連を持つことを突き止めたという。アカウントの停止は予告なく行われ、「これは懲罰的な行為だ」と社員らは主張している。

フェイスブックは10月に、NSOを提訴した。フェイスブックによるとNSOは顧客向けにワッツアップの通信を傍受するツールを開発し、ジャーナリストや外交官、政府高官のメッセージを読ませていたという。

NSO側は「当社のテクノロジーは結果的に、数千名もの人々の命を救うことにつながった」として、法廷で争う姿勢をとっていた。

フォーブスはフェイスブックにコメントを求めたが現時点で回答は得られていない。NSOは声明で、「今回の訴訟は社員らが独自に起こしたもので、当社は無関係だ」と述べた。

NSOの社員らは次のように述べている。「フェイスブックが我々の個人アカウントをブロックしたことは許しがたい。彼らが個人のデータを不正に利用して、この措置を行ったことも非常に腹立たしい」

NSOグループは民営スパイ企業として世界的知名度を誇っている。彼らは自社の使命を「各国の司法機関にソリューションを提供し、テロリストや凶悪犯罪者の犯罪を防止すること」としている。しかし、一部のセキュリティ研究者はNSOがサウジアラビアやメキシコ、モロッコなどの独裁色の強い政府に監視ツールを提供し、反体制グループや人権活動家らに危害を及ぼしていると非難している。

2018年には、サウジアラビア政府を批判していたジャーナリストのジャマル・カショギがトルコのサウジ総領事館内で殺害されたが、米国の諜報機関によると、サウジ政府はNSOのツールを用いて彼の通信を傍受していたという。

編集=上田裕資

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