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天才アブライアン-ルイ・ブレゲが創業したブレゲは、時計界において特別な名前だ。トゥールビヨンをはじめとした複雑機構、ブレゲ針などのデザインは現代のモデルに多大な影響を与えている。この「クラシック」は、その影響が最も顕著に表れたモデルである。また、スポーツ・コレクションである「マリーン」にも、その伝統は色濃く残されている。


突出した時計師

創業者のアブライアン-ルイ・ブレゲは、「時計の進化を2世紀早めた男」と呼ばれるほど、突出した時計師であった。現在も機械式時計に搭載されている多くの機構が彼の手によるものであることからも、その実力は驚異的といってもいいだろう。他の追随を許さない偉業なのだから。

そんなブレゲが最初に開発したのは、33歳の時に作った自動巻き機構。これによって名声を得たブレゲは、以降クロノグラフ、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨンなど、時計好きには知らないものがないほど有名な複雑機構を開発。さらに、ヒゲゼンマイ、耐震構造、ツインバレルといった重要な仕組みやパーツに至るまで、次々に考案していったのである。

デザイン面でも大きな功績を残しており、青焼き処理が施されたブレゲ針、独特の書体のブレゲ数字、、ダイヤルなどに施されるギヨシェ装飾もブレゲによるものなのである。

そんなブレゲが残した遺産を、もっとも強く継承しているコレクションのひとつが「クラシック」である。


「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット スケルトン 5395」
ダイヤルから、トゥールビヨンが搭載された精緻なムーブメントが見える。自動巻き、プラチナケース、41㎜径、2605万円


今年登場した「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット スケルトン 5395」は、スケルトナイズされたダイヤルから、美しいゴールド製のムーブメントを見ることができるモデル。パーツ一つひとつにクル・ド・パリなどのギヨシェ彫りが施され、さらには、ブレゲ針、コインエッジなど、ヘリテージともいえる意匠が投入されている。

トゥールビヨン機構

もちろん目玉は、これは5時と6時の間に置かれているトゥールビヨン機構である。トゥールビヨンは、キャリッジ(カゴ)を回転させることによって、重力の影響をプラス、マイナスの力として振り分け、一回転することで力を相殺して精度を維持する。重力による姿勢差を構造的になくすのではなく、重力を利用して姿勢差を解消する仕組みである。

これは最高峰の時計機構のひとつで、一時期はブランドの技術力を誇示するために多くのブランドが最上位モデルに搭載したほど、高度な技術を必要とする複雑機構の代名詞的存在でもある。

それを本家ブレゲは、スケルトンにして機械の美しさを魅せながら、超薄型のケースに収めてみせ、機械式時計の魅力を存分に引き出している。

また、そんなブレゲのヘリテージは、スポーツウォッチの分野にも受け継がれている。

「マリーン」コレクションがそれで、アブラアン-ルイ・ブレゲが、1815年にフランス国王ルイ18世より「フランス王国海軍時計師」の称号を授かり、マリン・クロノメーターの製作を行なったことに端を発する。

当時、マリン・クロノメーターは船の現在地を計測するために、とても重要な役割を果たしていた。緯度においては計器と天体の位置測定で容易に計れたのだが、経度が非常に難しく、時刻と太陽の位置から測定する方法がとられていたのだ。

それには正確さに加えて、常に船上に置かれ、揺れても故障することがない強靭な時計が求められた。当時のフランス王国において、そんな重要な機械を作るという任を担っていたのが、ブレゲだったのだ。

ベーシックで重要な機能

現在の精度基準では、スイスクロノメーター協会の検定=COSC(Contrôle Officiel Suisse des Chronomètres )が有名だが、その検査基準に姿勢差や温度差などがあることでもわかるだろう。それは、現在でも必要とされるベーシックで重要な機能でもある。

現代の「マリーン」は、バラエティに富んだケース、機能を揃えている。

とくに今年は、チタン素材のケース&ブレスレットが登場している。チタンは、軽量であることに加え、潮風はもちろん、腐食に対する耐性に優れている。「マリーン」のような海の場面での使用を考慮したモデルには、ピッタリの素材である。


「マリーン 5517」
スレートグレーのダイヤルによって、とてもモダンな印象に。自動巻き、チタンケース、40㎜径、216万円


それも、ブレゲならではの美しさを出すために、ブレスレットのコマ一つひとつにサテン仕上げが施されているのだ。さらに、ケースにサテン仕上げを、ベゼルをポリッシュ仕上げにすることで、絶妙なコントラストを生み出している。


「マリーン クロノグラフ 5527」
スモールセコンド、30分計、12時間計を持ったクロノグラフモデル。自動巻き、18KWGケース、42.3㎜径、366万円


他にもホワイトゴールド、ローズゴールド、プラチナケースのモデルが用意されており、それぞれ、もちろん美しく、個性的な仕上がりとなっている。


「マリーン アラーム ミュージカル 5547」
アラーム機能に加え、第2時間帯を表示するデュアルタイム機能も。自動巻き、18KRGケース、40㎜径、432万円


機能的には、ベーシックな3針モデル、クロノグラフモデル、アラーム機能とデュアルタイムが載ったモデルなどがラインナップされているが、とくに注目したいのは超複雑機構の「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」だ。

このモデルに搭載されている「イクエーション・オブ・タイム」は、現代の腕時計ではトゥールビヨン以上に稀少な機構である。

地球は楕円の軌道を描いて太陽を周回し、さらに自転軸が傾いていることによって、一周の間隔は必ずしも一致しない。つまり、本来1日の長さは一定ではない。それが「真太陽時」。そこで使われたのが、1年の長さを平均化し、毎日の長さが同じになるように計算上定めた「平均太陽時」だ。これが現在私たちが使用している時間なのである。

この「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」は、2本の分針で平均太陽時と真太陽時を同時に表示する希少かつ魅力的な機能を持っている。この機構は、ブレゲを含め製作しているブランドがほんの数社に限られる、とても難しい技術でもある。そこに、トゥールビヨン、永久カレンダーという複雑機構も搭載されているのだから、どれだけスゴいモデルなのか、お判りだろう。


「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」
トゥールビヨンに、パーペチュアルカレンダー、イクエーション・オブ・タイムを搭載したグランド・コンプリケーション。自動巻き、プラチナケース、43.9㎜径、2494万円


例年以上に女性モデルが充実

また、2019年のブレゲは、例年以上に女性モデルが充実していた。

ブレゲは「紳士の時計」の代表格的な存在のため、レディスをイメージし難いかもしれないが、コレクションは充実している。もともと、マリー・アントワネットやジョセフィーヌといった、上流階級の女性たちに愛されてきたブランドなので、当然の話ではあるが。

ただ、今年注目したのは「マリーン」のレディスに登場したステンレススチール製のモデルである。ブレゲは、「クイーン・オブ・ネイプルズ」や「クラシック」に代表されるドレスウォッチのイメージが強く、しかも、貴金属やダイヤモンドをふんだんに使用したゴージャスラインが多かった。

そんなレディスコレクションのケース素材にステンレススチールなのだが、これが秀逸なのである。まず、「マリーン」というスポーティなモデルで、それほどの違和感がないし、もちろんブレゲらしくダイヤモンドとのコンビネーションもいい。仕上げのよさと配色の絶妙感が、上品さをさらにかさ上げした感さえあるのだ。とくにダイヤルの模様の美しさ、そして、ユニークさは、他では見られない独特のものとなっている。 


「マリーン レディ 9518」
ダイヤルに使われたラッカー仕上げのネイビーがとても美しい。自動巻き、SSケース、33.8㎜径、224万円
「マリーン レディ 9518」
マザー・オブ・パールに波モチーフのギヨシェという個性。自動巻き、18KRGケース、33.8㎜径、377万円

Promoted byブレゲ / 文=福留亮司 / 写真=星武志

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