「創業20周年を迎えた当社は、重要な節目を迎えられた」とアリババのダニエル・チャン(張勇)会長兼CEOは上場セレモニーで述べた。「アリババは故郷の香港市場で上場を果たした」
アリババは新株5億株を1株176香港ドルで公募し、約110億ドル(約1兆2000億円)を調達。時価総額最大のアジア企業となった。
ここ10年の香港市場で最大規模となった上場により、アリババは比較的新しい事業であるフードデリバリーやリアル店舗向けの資金を獲得できた。アリババ傘下の出前企業のEle.meは、テンセントが支援する美団点評と激しい価格戦争を繰り広げている。
さらに、香港での上場によってアリババは、米中の緊張の高まりのなかで、母国の投資家を呼び込むことができる。最初の上場をニューヨーク市場で果たし、時価総額5090億ドルを誇るアリババは、資金の流入元の多様化を行える。
アリババの香港上場に向けては香港証券取引所も期待を注いでいた。創業者のジャック・マーは2014年の上場の際に、香港を希望したが、香港証券取引所は複数議決権株を認めていなかったため、ニューヨーク市場を選んでいた。
しかし、その後、香港市場においても複数議決権株のルールは緩和され、経営陣は一般株主よりも多くの議決権を維持することが可能になった。
「アリババが2014年に最初の上場を行った際、残念ながら香港での上場は見送ることになった。香港は世界で最も重要な金融ハブであり、過去数年で香港市場では多くの前向きな改革が実行されてきた」と、チャンCEOは11月中旬の株主向け書簡で述べていた。
アリババの香港での二次上場は、ここ数カ月の間、民主化デモが吹き荒れた香港の市場を勇気づけることにもつながる。デモの影響により香港経済は4月から6月にかけて0.5%の縮小を記録しており、2四半期連続のマイナスで景気後退が確定的となっていた。
「変革の流れの中にあっても、我々は香港の未来が明るいと信じている。当社が果たせる役割は大きくはないかもしれないが、アリババが香港の今後に貢献できることを望んでいる」とチャンは述べた。