スウェーデンから学ぶ「共創イノベーション」の生み出し方


Ericsson Oneの所属するEricsson本社ビル

今回の記事の舞台は、ストックホルムから車で20分ほどの郊外にあるKista Science City(シスタ・サイエンス・シティ)とよばれるサイエンス・パークだ。多くの研究所やハイテク企業が軒を連ねるこの街は、「モバイル・アンド・ワイヤレス・バレー」との異名も持ち、ITやモバイル・コミュニケーション技術の中心地として知られている。産官民共創のモデル都市としての評価も高いという。

「産総研デザインスクール」と「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」が合同で行ったスウェーデンのイノベーション・シーンの調査で、私たちは、この街の中心的なプレイヤーのひとつであるエリクソンのオフィスを訪問した。エリクソンが展開する新たな取り組み「Ericsson One」についてリサーチするのが目的だ。

エリクソンと言えば、通信機器の製造を中核としたスウェーデンを代表する企業。世界のモバイル・コミュニケーションを牽引し、近年の「5G革命」のキープレイヤーのひとつともされる、北欧の雄である。

Ericsson Oneはそのエリクソンにおけるインキュベータープログラム特化部門で、いわば、“イノベーション別働隊”チームだ。社会課題を起点に、その解決をはかるアイデアを発想し、エリクソンが研究開発を行っている技術を活用しながらプロトタイピングするという取り組みを進めている。

もちろん、エリクソン“本隊”にはR&D部門があり、600人超の研究者・技術者を擁している。しかしEricsson Oneは、この“本隊”とは別に、CEO直結組織として、R&D部門とは独立して組成された組織となっている。

では、なぜ本隊とは別に“別働隊”をつくる必要があったのだろうか? Ericsson OneのMatilda George氏は次のように語ってくれた。

「Ericsson One設立の背景には、実はエリクソンが抱えていた二つの大きな課題があったんです。一つは優れたアイデアを持つ人材が『もっとクリエイティブなことをしたい!』と言って会社を離れて起業してしまいがちなこと。もう一つは、社会のニーズと合致しない技術開発が行われがちなこと。これらを打破するための試みがEricsson Oneなんです」

エリクソンのMatilda George氏
案内をしてくれたMatilda George氏(中央)

Ericsson Oneは、R&D部門とは切り離された別働隊として、社内から優れたアイデアを集め、そこからビジネスを創り出すことにフォーカスしている。テクノロジーそのものではなく、あくまでも社会のニーズを立脚点とし、そこから新しいプロダクトやサービスを作り出すことを想定しているのが特徴だ。

R&D部門が基礎技術の開発を行うのに対して、Ericsson Oneはそれらの技術シーズをどのように応用して社会インパクトを生み、どのようにビジネスにしていくかの試行錯誤に焦点を当てているとも言える。

文=小島一浩

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