だが、それは思い違いだったらしい。
「フラッキングは決してやらない」。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は20日、モスクワで開かれた投資フォーラムで、フランスのエネルギー大手トタルの代表から質問された際、改めてそう断言した。
「シェールオイルを開発する必要など全くない。そもそも、われわれには世界市場への原油供給を増やす必要がないし、また、われわれには北極の大陸棚で採れる原油が十分あるからだ」。プーチンはそう説明した上で、フラッキングについてこう付け加えた。
「環境にとっておぞましいものだ」
プーチンの発言に問題があるとすれば、それはロシア最大の天然ガス企業の立場と食い違っている点だろう。
ロシア国有の通信社、スプートニクの2016年の報道によると、ガスプロムは、ウクライナ関連の制裁で米国からの技術購入が禁止されたため、水平掘削技術の自社開発を進めていた。
同社の子会社でロシア石油大手のガスプロムネフチは同年、西シベリアのバジェノフ層で、同社初となる水平坑井を完成させた。バジェノフ層にはカラ海の鉱区も含まれ、その鉱区ではかつて米石油メジャーのエクソンモービルとロシア石油大手のロスネフチが資源開発の合弁事業を営んでいた。しかし、当時のバラク・オバマ米政権による経済制裁を受けて、事業は打ち切りになっていた。
ガスプロムネフチが水平掘削に成功した当時、ロシアの政府系メディアは、シェールオイルやシェールガスを採掘するのに米国の技術は不要だと盛んに報じていた。
ただ、プーチン本人は一貫してシェール開発に否定的だった。また、ロシア政府系のテレビ局RTは、フラッキングが原因で地震や汚水が発生したり、水道の蛇口に火を近づけると炎が出たりする問題を番組で定期的に特集してきた。