それでもまだ大学時代は、「日本代表に入りたい」とは思っていなかった。きっかけは2012年にエディー・ジョーンズHC率いる代表チームに選ばれた時。そこで「もっといいプレイがしたい」という欲が大きくなったんです。
状況に応じて、ルーティーンをアップデートする
僕は思い悩むタイプではないので、例えラグビーを辞めたいと思うほどの困難があったとしても、覚えていません(笑)。切り替えが上手いというよりも、忘れるタイプ。これは子どもの頃からで、「水道、出しっぱなし」「忘れ物をする」と、同じことで何度も両親に怒られていました。
ただ不思議なことに、ラグビーに対してだけは相当細かいんです。きちんと目標を立ててクリアしていくために、メンタルもフィジカルも整えていきます。普段から、試合の1週間前にメンタルとスキル、そしてテクニカルの準備を開始し、限界まで仕上げていく。
今回のワールドカップでもいつも通りの調整をしてのぞみましたが、想像を超える凄まじいプレッシャーがありました。初戦のロシア戦で、「このままでは飲み込まれる」という初めての感覚を経験し、実は、2試合目のアイルランド戦に臨むにあたり、メンタルの準備を組み立て直しました。
タックルのリズム・キックのリズムなど、最悪のケースまで想定しきったイメージトレーニングを行ったことでプレッシャーもほぼ気にならなくなり、むしろワクワクする状態にまで整えられた。
あれだけの舞台でも、「もうやれることは全部やったから、後は楽しむだけ」というサイクルをつくれたことは、僕自身の成長でもありました。またひとつラグビーで伸びた感覚があって嬉しかったですね。
早い段階で捉えて、磨き上げ、強みを発揮する
筋トレをはじめとした身体を鍛えるトレーニングはもちろん重要ですが、「頭を使う」ことは僕の特徴のひとつかもしれません。というのも、僕は身体能力が飛び抜けて高いわけではないと思っています。だから、頭で考えて技術を磨いて、補おうとしています。
例えば今回の代表で言えば、松島幸太朗選手や福岡堅樹選手はとにかく足が速い。走っても彼らには勝てません。そういう選手たちと渡り合っていくためにも、自分はどの分野で強みを発揮していくのかを、早めに考える必要がある。
だから僕は、誰よりもラグビーというスポーツを理解する。ラグビーIQを上げて勝負するんだと考えるようになりました。身体だけに頼った強引なパワープレーではなく、頭も使ったプレイが、自分のスタイルになっています。
例えば、どういう風に試合が流れているのかは大体頭に入っているし、試合展開に応じて、その瞬間に自分がどの位置にいるべきか把握して行動しています。