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カニエ・ウェストのプロダクトへの強いこだわり、並外れた審美眼は10億ドルの「スニーカー帝国」に結実した。彼の奇行と創造性の謎に、前後編で迫る。


プロダクトへの強いこだわり、並外れた審美眼は10億ドルの「スニーカー帝国」に結実した。カニエ・ウェストの奇行と創造性の謎に迫る。

ツアーの中止、入院、5300万ドル(約60億円)とされる借金から3年。ヒップ・ホップのスーパースター、カニエ・ウェスト(42)は、この10年で最大のヒットを当てた。音楽以外の分野でだ。10億ドル(約1100億円)の『Yeezy(イージー)』ブランドのスニーカー帝国は現在『AirJordan(エアジョーダン)』を凌駕する可能性が最も高い存在だ。すべてを支配しようとすることが、時に結果を生む。

「彼ほど細部にこだわる人には、会ったことがない」。妻のキム・カーダシアン・ウェストはいう。

ロサンゼルス郊外の邸宅を、マットブラックに塗装されたランボルギーニSUVが大きな振動音をさせて玄関までのドライブウェイを走る。車の中から白のTシャツとダークカラーのスウェットで降りてくるウェストの姿には、強いこだわりが見て取れる。

彼が妻と4人の子ども(ノース、セイント、シカゴ、サーム)とともに住む豪邸の、贅をこらしたエクステリア(外装)は、飾り気のない室内の石膏壁と好対照をなしている。表面はほぼすべて修道院のような白。床はベルギーから取り寄せた特別な漆喰で、傷んだときにはヨーロッパから人を呼ばないと直せない。「この家は彼そのもの」と、カーダシアン・ウェストは言う。

玄関に入ると召使いから、私の履く黒とグレーのハイトップのエアジョーダンを、布製のオーバーシューズで包むか聞かれる。左側にはウェストの書斎があり、本棚には『アレキサンダー・マックイーン:サヴェージ・ビューティ』(メトロポリタン美術館)や『村上隆:奇想の系譜』(ボストン美術館)などの展覧会カタログが並ぶ。

彼は、乱れていた数冊の本の位置を直す。彼は正面のアームチェアに腰を下ろし、インタビュアーである私をじっと見る。「俺が最初にスケッチした靴は、あんたがいま履いている『ジョーダン1』だったと思う」とウェストは言う。「やっぱり、神は物事をつなげる術を知ってるな」。

厳密さがウェストを世界で最も有名なミュージシャンのひとりへと押し上げた。「彼は別次元に進み、やってのけた」とDJキャレドは言う。音楽制作でウェストと時間を過ごし、フォーブス誌「世界で最も稼ぐセレブ100」で彼とともにランクインするミュージシャンだ。

とはいえ、1990年代のマイケル・ジョーダンと同じく、ウェストの富の源泉はスニーカーだ。2009年にナイキから発売し、13年にアディダスに移った靴のライン、Yeezyは、34年目となるエアジョーダンを、文化的な影響力と商業的な実力の両面において、射程に収めている。ジョーダン・ブランドの年間売り上げ約30億ドルに対し、ウェストの新興ブランドは19年に15億ドルを上回る見込みで伸びている。

床やオーバーシューズや本の位置と同様、ウェストはスニーカーのディテールにこだわる。スティーブ・ジョブズを崇拝し、選びぬかれた数点の商品に、無限のカラーバリエーションを持たせることを好んでいる。

文=ザック・オマリー・グリーンバーグ 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=有好宏文 構成=岩坪文子

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