アメリカで渡す「チップ」はどれぐらいが適正なのか?

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アメリカではサービスを受けたらチップを渡すのが常識だと、小学生でも知っている。しかし、一体、料金の何%を渡せばいいのだろう? 日本の観光ガイドブックにはおよそ15%〜20%と書いてあるが、過信しないほうがいい。アメリカ人でもチップの適正値については、皆が迷っているのだ。

読者にアメリカ人の友人がいたら、「たとえば、水道屋さんが水回りの修理をしてくれたとき、いくらチップを払うべきか」と訊いてみるといい。必ず肩をすくめて、「個人的な意見だけど……」という前置きがついて、話し始めるはずだ。

いつかチップについて、日本人でもわかりやすいコラムを書こうと思っていたことがあった。しかし、在米23年になっても、誰もが納得する説明が思い浮かばない。実は、答えのない世界なのだというのが結論だと思うに至った。アメリカの新聞の家庭欄にも、年に1回はチップについての解説が載るくらいだ。しかし、どの答えも明快ではない。つまり、アメリカ人もよくわかっていないのだ。

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チップで年間1000万円以上稼ぐ

最近は、ファストフードでもチップをほのめかすところが出てきたし、独立系の小さなカフェでは、クレジットカードを決済する際、タッチパネルで署名をするときに、「チップをどうしますか?」という金額選択画面が出てくるシステムを使うところがとても増えた。

同じアメリカのなかでも、チップ文化は大きく違う。サービス産業に極端に特化した筆者の居住するラスベガスでは、チップの額も大きい。サービスを受けるほうも、自分がサービスを提供してチップをもらうほうだったりすることもあるので、多額のチップをあげて、「お互いさま」という発想の人も多い。トップクラスのホテルだと、バレー駐車係(ホテルの玄関で顧客のクルマを停める人)は、チップだけで年間1000万円以上稼ぐという。

サンフランシスコやシアトルは、前述のタッチパネル形式のチップ支払いの発祥地なので、「こんな小さなサービスに対してまで」と思うくらい、チップを求めるシーンが多いようだ。どちらかというと、田舎のほうが都会よりも、チップに関してはおおらかなようで、サービスの人の笑顔は、チップの額の多寡にそれほど影響されない。
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文=長野慶太

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