「精神疾患に対する医療用大麻の有効性」に疑問符

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精神疾患の治療目的で、大麻由来の成分カンナビノイドが配合された薬を飲んでいる人は、新たに発表された研究結果を聞いて、肩を落としてしまうかもしれない。各種の医療用大麻には一般的に、さまざまな精神疾患に対する明白な治療効果がないことが明らかになったのだ。それどころか、利点よりもリスクのほうが上回る可能性があると、研究論文の著者たちは結論づけている。

不安障害に対しては何らかの有効性が認められる可能性があるが、それについてもエビデンスの質は低く、相関関係を高く信頼できるとは言い切れない。

英医学誌「The Lancet Psychiatry」で発表されたこの研究論文は、83件の既存研究をメタ解析したものだ。対象にした研究の半分では、無作為化比較対照試験という、科学研究で望ましいとされる方法がとられている。

対象となった研究で扱われていたテーマは、うつ病が42件、不安症が31件、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が12件、重度の精神病が11件、トゥレット障害が8件、注意欠如・多動症(ADHD)が3件だった。

研究に使用された薬の成分配合はさまざまだった。テトラヒドロカンナビノール(THC:大麻に含まれる精神活性成分)だけが含まれている場合もあれば、THCとカンナビジオール(CBD:精神活性作用はなく、治療に関してより効果的だとされる化合物)が混合されたものもあった。CBDのみのものも少数あった。

THCは、CBDが混合されている場合もいない場合も、不安障害の軽減と相関関係があったことを示す証拠がいくつかみられた。しかし研究論文によれば、エビデンスの質は低いという。つまり、研究の質に疑問の余地があるということだ。

加えて、THCは有害事象(副作用)のリスク、ならびに有害事象が原因となって研究から離脱するリスクの増加と関連性があった。そして、「これらのいかなる精神疾患であれ、医薬品としてのCBDや医療用大麻が治療に有効であることを示す証拠はほとんど見られなかった」と結んでいる。

研究者たちは、長期的な大麻の使用によって、憂慮すべき心理的影響が及ぶリスクを示唆する証拠のほうが多いことを考えると、利点がリスクを上回る可能性は低いと結論している。豪ニューサウスウェールズ大学の研究者たちはこの論文で、「抑うつ障害とその症状、不安障害、注意欠陥多動性障害、トゥレット障害、PTSDや重度の精神病を大麻が改善させることを示す科学的証拠は乏しい」と書いている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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