しかし、日本の現状に目を向ければ、長時間労働の果ての過労死や睡眠負債といった言葉がメディアを賑わせている。最近でこそ、政府の旗振りで「働き方改革」が叫ばれているが、早くからこの問題に向き合ってきた企業がある。日本マイクロソフトだ。
同社が今夏、試験的に導入した週勤4日&週休3日を柱とする自社実践プロジェクトの結果が、10月31日に発表された。同社の「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」の一環として行われた週勤4日&週休3日制だが、その結果は、海外メディアでも報じられるほど注目を集めた。
同社は、経営戦略の中核に「働き方改革」を掲げ、2007年に在宅勤務制度を、2011年のオフィス統合・本社移転を機にリモートワークやフレキシブルワークを本格導入するなど、働き方改革が叫ばれる以前から、この問題に取り組んできた。その結果、直近10年で、業務生産性が202%、事業規模が180%向上し、残業時間は大幅に減少した。
同社のさまざまな働き方改革を紐解くキーワードは、「多様な働き方への主体的・自律的なチャレンジ」。具体的には「短い時間で働く」と「よく休み、よく学ぶ」の2点だ。
長時間労働をすると上司へアラート
マイクロソフトの代表的な製品と言えば、ワードやエクセル、パワーポイントなどが使えるOffice 365などを思い浮かべるだろう。「弊社の製品やサービスは、お客様の仕事の効率をあげるためのツールです。それならば、自社の社員の労働効率も上げようとなりました」と働き方改革に至った経緯を語るのは、日本マイクロソフト 業務執行役員 コーポレートコミュニケーション本部長の岡部一志だ。
「短い時間で働く」とは、簡潔に言えば、短時間の労働でいかに生産性を高めるかにつながる。そのために、同社は2016年に就業規則を改定し、コアタイムを撤廃し、リモートワークをより利用しやすい環境にした。
しかし、こうした働き方は、同時に、上司が部下の労働時間を把握できず、長時間労働が常態化するリスクも孕んでいる。
「リモートワークでも1日7.5時間を基準に、社員各自が労働時間を毎日記録するシステムになっています。一定の労働時間を超えると上司にアラートが届きます。超過した労働時間については、本人がフレキシブルに調整する仕組みです」と長時間労働への対策について岡部は語る。