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地方発イノベーションの秘訣

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これまで自治体におけるシステムやアプリの開発といえば、NTT、日立、NEC、富士通といった、大手ベンダーが独占してきた。各社が独自のソフトウェアを組んでいるため、競合他社への乗り換えは容易でなく、開発でも乗り換えでも、そのコストが自治体を悩ませてきた。

それに、官公庁は古い体質が残りがちで、電話や紙を使った仕事をしていたり、使い勝手が悪いシステムを導入したり、改善の余地が大きい。そんななかで神戸市は、職員がスタートアップとコラボする新たな手法で、システムやアプリの開発を始めた。しかも、開発費を半減させる事例も生まれつつある。

果たして何が起こっているのか、その仕組みを以下にまとめてみた。


新経済連盟主催のNEST-KANSAI-2019(11月5日)で取組みを紹介する神戸市の久元喜造市長

スタートアップだからリスクを取れる

神戸市が始めたのは、簡単に言うと、市職員が解決したいテーマを掲げて、スタートアップに助けを求めるプログラムだ。例えば、「母子手帳を電子化したい」といったシンプルなテーマだけを示して、我こそはと手を挙げたスタートアップから最も優れた企業を選び、解決策を生み出していく。

本来であれば、市役所や区役所の職員は、どのようなシステムやアプリをつくるのか細かく示した「仕様書」を作成しなければならないが、AI、RPA、ブロックチェーン……と技術が進化するなかでは、仕様書自体を書くことが難しい。その手間や労力を省けるようになる。

実はこのプログラムは大手ベンダーも参加ができるが、2017年に開始してからまだ実績がない。このような成功するか判らない開発は、常にコストに見合った売上が求められる大手の思考には合わないからだ。

逆に、ベンチャーキャピタルがリスクを負うスタートアップは、売上につながるかどうか判らない段階でビジネスに挑むのが基本だ。この神戸市のプログラムにマッチするビジネスモデルを持っている。

年間1900時間を削減

実働した具体例を紹介しよう。神戸市には、市立だけで小学校、中学校などが約300ある。そこに教員ら約9000人が働いている。毎年4月の人事異動で勤務先が変わると、新たに通勤届が提出されて、これを教育委員会事務局の給与支給係が1枚ずつ、地図や路線図と見比べて、正しいルートなのか手作業でチェックしている。

こんな仕事のやり方はおかしいと考え、モンスター・ラボ(東京都渋谷区)と組んで、RPA(Robotic Process Automation)で通勤ルートと手当を計算するシステムを導入し、年間1900時間の作業時間の削減に成功した。

これを担当した給与支給係長の大浦富男は、「モンスター・ラボから元の仕事のやり方を変えたほうが良いと言ってきた。仕様書を自分たちでつくるやり方ではそこに気付かなかったはずだ」と語る。

編集=稲垣伸寿

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