直接消費者に向けて発信する競合ブランドの数は増加中で、ヴィクトリアズ・シークレットの広告塔である「エンジェル」らが体現する旧来のセクシーなイメージは支持を失っている。
サードラブ(ThirdLove)などのブランドは、さまざまな体のサイズに合った選択肢を提供し、自らの体を肯定的に捉えるメッセージを発信している。また、これまでヴィクトリアズ・シークレットがモールで競合してきたアメリカンイーグルブランド「Aerie(エアリー)」では、修整を加えられていない現実世界の顧客のイメージを売り込む戦略が功を奏し、ピンクの若い購買者層を奪ってきた。
ただ、ブランドのメッセージは一つの要素でしかない。そもそも多くの顧客の足が遠のいた原因は、商品が顧客の共感を得られなかったことにある。
投資銀行パイパー・ジャフリーが今秋実施した調査「Taking Stock With Teens(10代の若者の評価)」によると、ヴィクトリアズ・シークレットは10代の若者のお気に入りアパレルブランドランキングで、2018年春の5位から13位へと転落した。一方、アメリカンイーグルの順位は2位に上昇している。
米下着市場は成長中で、現在約130億ドルを誇っている。英調査会社ユーロモニターによれば、その中で最大のシェアを誇るのはいまだにヴィクトリアズ・シークレットだが、それも2018年にはその5年前の32%から24%へと減っている。一方アメリカンイーグルのエアリーは、同時期にシェアを倍増させた。
エル・ブランズの株価の終値は20日、16ドル(約1700円)だった。100ドル(約1万1000円)近くを達成し、ピークを迎えた2015年後半にと比べると急激な値下がりだ。
ヴィクトリアズ・シークレットも努力はしている。ピンクが先日行った電子メールキャンペーンではプラスサイズのモデルが特集され、写真も修整されていないようだった。しかしこうした動きが、見る目のある今日の買い物客にとって心からの取り組みに見えるのか、また他のブランドに流れた顧客を同社が最終的に奪い返せるのかはまだ分からない。
投資銀行RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ケート・フィッツサイモンズは20日後半の報告書で、ヴィクトリアズ・シークレットは「困難を脱していない」と述べた。
同社には、状況を好転させるために必要な時間的余裕はないかもしれない。