革命的なポルシェのEVが業界の基準を変える


よく考えてみれば、この元チーフデザイナーの言う通りだ。今、既存のどのEVを見ても、結構車高が高い。日産リーフ、ジャガー I-PACE、アウディEトロン、メルセデスEQC、そしてテスラ・モデルSやモデルXはどれも、必要なハードウエアを載せるために、かなり車高が高くなっている。

音楽業界に例えると、タイカンはかつて革新的だった「ウォークマン」にあたる。携帯業界に例えると、「iPhone」と同様のインパクト。タイカンは、まるで再利用ができる初の宇宙船「スペースシャトル」のようだ。

イギリスのトップギア誌によれば、これまでのEVセダンのベンチマークだったテスラ・モデルSとタイカンを比べると、0−100km/hの加速は2.8秒とほとんど同等だけど、タイカンの強みはそういう急加速を8回以上やっても、バッテリーのパワーが落ちない。テスラは2、3回で落ち始めるという。

世界初の800V系の駆動システムと4WDのグリップ力のおかげで、ゼロから加速しても、100km/hから加速しても、無限のパワーに驚かされる。しかも、10ピストンのブレーキはポルシェらしい強烈な制動力を誇っている。幸せなことに、変にスポンジーな感触の回生ブレーキのフィーリングではなく、ペダルフィールはしっかりしている。

ハンドリングもまたポルシェらしく、力強い接地性と業界一流のスタビリティーが感じられた。ロー&ワイドで、しかも低重心設計になっているので、タイトなS字コーナーで激しく左右に振っても、まったく不満を覚えなかった。乗り心地も期待して以上にしなやかだった。

タイカンの凄さは、速さと走りだけではない。EVらしく発進は滑らかで、市内での一般スピードでも実に扱いやすかった。リアモーターに組み合わされている2段自動変速機構は、スムーズな動作を示してくれる。ドライビングモード切り替えでノーマル、スポーツ、スポーツ+があるが、スポーツ+をセレクトすると、かなりスポーティで人工的な音がキャビンに広がって、加速性がさらにブーストされる。



内装も近未来的で、乗っただけで10年先にタイムスリップしたような気分だ。ダッシュボードには3枚のタッチスクリーンのディスプレーがあり、スマホ感覚で操作できる。

タイカンの性能、走り、スリル度は業界の最高レベルに達している。その革命的な電動プラットフォームは、業界の隅々まで覚醒させるはず。タイカンはただの新車ではない。これは新しいバロメーターとして、これからのEVは全てタイカンに比較されるだろう。

でも、ポルシェよ、タイカンやマカンなどのSUVをどんどん電動化しても、911だけはいじらないでほしい。2030年になっても、ガソリンターボ仕様の911に乗りたいな。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

ForbesBrandVoice

人気記事