ファーウェイが日本に及ぼす経済効果、4年で6倍に

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米中貿易戦争の争点になっている通信機器大手のファーウェイ(華為技術)、日本でも来年に一部で開始予定の次世代通信5Gの通信インフラで、ファーウェイ製の機器を使用しない方向に進んでいるが、専門家によると「日本の電子デバイス産業に大きなダメージになりかねない」という。

ファーウェイは11月21日、都内で記者会見を開催し、独立系調査会社の英オックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)がまとめた「ファーウェイの日本経済への貢献」を発表した。会見には、華為技術有限公司の取締役会長を務める梁華氏が中国から来日し、東洋大学教授で元国務大臣の竹中平蔵氏もゲストとしてスピーチを寄せた。


華為技術有限公司の取締役会長、梁華氏

梁華氏は、日本企業は「製造工程、物理、化学、素材などで技術と蓄積がある」としWin-Winで補完的な関係を継続したいとした。

梁氏は「2019年は大きな外部からの圧力を受けた」と認めながら、最初の3四半期は24.4%の成長率でビジネスを成長したと胸を張る。「我々は課題と挑戦を乗り切り、業務を安定的に発展させることができた。今後も会社として安定的な成長を遂げる自信があり、顧客により多くの価値を提供できる」と梁氏は続ける。

では、ファーウェイは日本経済にどれほどの貢献をしているのか? 数字を並べると、2018年度に日本市場にもたらした経済貢献は7660億円、4万6400人の雇用を支え、2080億円の税収になった。日本のGDPへのファーウェイの貢献総額は2014年から33%増で増加しているという。

GDP寄与は、ファーウェイが日本でどのぐらい利益を上げ賃金を払っているのかの合算となる「直接的効果」、日本における資金調達などが含まれる「間接的効果」、自社およびサプライチェーン企業の従業員への賃金支払いにより生じるより広い経済貢献である「誘発的効果」を合わせたもの。

レポートを制作したオックスフォード・エコノミクスの在日代表、長井滋人氏によると、従業員のトレーニングなど定量的ではない「触媒効果」は含まれていないという。

2018年、直接的効果は200億円と算出されている。調査対象期間(2014年〜2018年)の直接的効果の成長率は年平均20%、長井氏によると、製造業全般では年平均1.6%にとどまるというから、ファーウェイは確かに日本のGDPに寄与していると言えるだろう。

2014年から2018年の間、ファーウェイは日本のサプライヤーから累計2兆2000億円規模の調達を行っており、年平均増加率は33%とオックスフォード・エコノミクスのレポートでは報告している。



ファーウェイの日本経済への貢献

ゲストスピーカーの竹中氏は、「一般には、貿易戦争の中で貿易量が低下し、経済にダメージを与える」と述べる。竹中氏が危険視するのは、需要側だけではなく「サプライチェーンが崩れることによる供給側の影響」だ。


元国務大臣の竹中平蔵氏

竹中氏は、ファーウェイに対して、「リスクとチャンスの間で頑張っている」「5Gのテクノロジーを最も多く持つ」と称賛し、日本企業とファーウェイは「従来以上にコラボレーションを強化し、お互いの技術を活用して第4次産業革命を実現する」べきだとの考えを示した。ただし、コラボレーションは「信頼」が必要であり、信頼を築きながらのコラボレーションに「ファーウェイがさらに尽力し、世界の政府もさらに尽力する──そういう状況をぜひ実現していただきたいものだ」とした。
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文・写真=末岡洋子

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