大統領選、「プライベート・エクイティ業界」に集まる厳しい視線

前マサチューセッツ州知事のデュバル・パトリック(Photo by Scott Eisen/Getty Images)

前マサチューセッツ州知事であるデュバル・パトリックは11月14日、大統領選(民主党候補指名争い)への出馬を表明した。この発表が、全米のプライベート・エクイティ(PE)投資会社のオフィスからうめき声の合唱を引き出したのはまちがいない。

もっとも大きなうめき声が聞かれたのは、おそらくボストンだろう。ボストンにあるPE大手ベインキャピタルは、また世間の監視の目にさらされることになるのかと身構えている。パトリックは知事を2期務めたあと、2015年にマネージングディレクターとしてベインキャピタルに加わり、以来、同社に在籍していた。

PE業界は、民主党の予備選挙において、すでにサンドバッグのようになっている。ここ数か月を見ても、バーニー・サンダース上院議員が「プライベート・エクイティのハゲタカども」についてツイートし、PEによる病院の所有を禁止するというアイデアを持ち出した。

また、エリザベス・ウォーレン上院議員は、PE業界を規制する法案を提案し、「ウォールストリートによる略奪を禁止する法(Stop Wall Street Looting Act)」という巧妙な名をつけた。

ウォーレンはPEの経営者を、企業の血を飲み干す「吸血鬼」になぞらえている。PEなどのマネージャーが成功報酬として受け取る「キャリード・インタレスト」に対する税優遇措置について批判しているほか、米国の企業にリスクの高い負債比率を背負わせているとしてPE業界を批判している。

さらに、ウォーレンの提案している富裕税は、「フォーブス」誌が名前を挙げた米国PE界の億万長者39人にも影響を与えることになる。そうした億万長者の大多数は、プライベート・エクイティの「プライベート」な性質を肝に銘じ、スポットライトの外にいることを好む傾向がある。

しかしPE業界は現在、まさに文字どおり、ますます大きな標的になりつつある。一般に、会社や資産を、多額の借り入れを使った長期ファンドで買うPEは、目下のところ活況を呈している。2018年には1兆4000億ドルのPE取引があり、PE投資会社はいまや8000社を超える米企業を所有している。

PEは今回の選挙シーズンにおいて、逆境に応戦しようと試みている。ワシントンのPE業界ロビー団体「アメリカン・インベストメント・カウンシル(AIC)」は、ウォーレンの主張に対抗するデータや論拠をさかんに出している。

AIC会長で、ニュー・マウンテン・キャピタルの経営者でもある億万長者のスティーブ・クリンスキー(Steve Klinsky)は、英大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY)のリポートを引用した記事を書き、PEは「米国の経済成長にとって最も重要なエンジンのひとつ」だと主張した。

AICプレジデントのドリュー・マロニー(Drew Maloney)に至っては、11月に「フォックス・ビジネス」に書いた論説のなかで、ファストフードチェーン「ポパイズ」の大人気メニュー、チキンサンドの誕生にあたってPEが果たした役割を褒め称えた。「それが実現したのは、すべてプライベート・エクイティのおかげだ」とマロニーは書いている。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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