もっとも大きなうめき声が聞かれたのは、おそらくボストンだろう。ボストンにあるPE大手ベインキャピタルは、また世間の監視の目にさらされることになるのかと身構えている。パトリックは知事を2期務めたあと、2015年にマネージングディレクターとしてベインキャピタルに加わり、以来、同社に在籍していた。
PE業界は、民主党の予備選挙において、すでにサンドバッグのようになっている。ここ数か月を見ても、バーニー・サンダース上院議員が「プライベート・エクイティのハゲタカども」についてツイートし、PEによる病院の所有を禁止するというアイデアを持ち出した。
また、エリザベス・ウォーレン上院議員は、PE業界を規制する法案を提案し、「ウォールストリートによる略奪を禁止する法(Stop Wall Street Looting Act)」という巧妙な名をつけた。
ウォーレンはPEの経営者を、企業の血を飲み干す「吸血鬼」になぞらえている。PEなどのマネージャーが成功報酬として受け取る「キャリード・インタレスト」に対する税優遇措置について批判しているほか、米国の企業にリスクの高い負債比率を背負わせているとしてPE業界を批判している。
さらに、ウォーレンの提案している富裕税は、「フォーブス」誌が名前を挙げた米国PE界の億万長者39人にも影響を与えることになる。そうした億万長者の大多数は、プライベート・エクイティの「プライベート」な性質を肝に銘じ、スポットライトの外にいることを好む傾向がある。
しかしPE業界は現在、まさに文字どおり、ますます大きな標的になりつつある。一般に、会社や資産を、多額の借り入れを使った長期ファンドで買うPEは、目下のところ活況を呈している。2018年には1兆4000億ドルのPE取引があり、PE投資会社はいまや8000社を超える米企業を所有している。
PEは今回の選挙シーズンにおいて、逆境に応戦しようと試みている。ワシントンのPE業界ロビー団体「アメリカン・インベストメント・カウンシル(AIC)」は、ウォーレンの主張に対抗するデータや論拠をさかんに出している。
AIC会長で、ニュー・マウンテン・キャピタルの経営者でもある億万長者のスティーブ・クリンスキー(Steve Klinsky)は、英大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY)のリポートを引用した記事を書き、PEは「米国の経済成長にとって最も重要なエンジンのひとつ」だと主張した。
AICプレジデントのドリュー・マロニー(Drew Maloney)に至っては、11月に「フォックス・ビジネス」に書いた論説のなかで、ファストフードチェーン「ポパイズ」の大人気メニュー、チキンサンドの誕生にあたってPEが果たした役割を褒め称えた。「それが実現したのは、すべてプライベート・エクイティのおかげだ」とマロニーは書いている。