全世代で心の健康が危機に 変革すべきは医療ではなく教育?

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また、就職する卒業生が職場に提供できる19の潜在的な特性の中で、重要だと答えた雇用主が最も少なかったものは学業成績だった。一方で上位に挙がったのは、コミュニケーションスキルやチームワーク、自発性、問題解決だった。

また英国では、大学におけるカウンセリングサービスが支援を求める学生からの需要の高まりに対応できずにいる。

大学での「情動教育」は斬新なもの?

学業に対し厳しい姿勢を持ち、知的成長や画期的な研究を追求する機関と考えられている大学は、授業に「情動教育」を加えることでなぜか大学の評判に傷がつくことを懸念しているようだ。

しかしここでは、高等教育の分野で情動に関する自己啓発を「ソフトに」追求することを支持する論拠を提示したい。

英出版社のピアソンによると、大学の目的は「理性や探究、哲学的開放性の守護者」となり、「社会的流動性を実現することで、人々に人生を一変させる」救済者になることだ。

この点を考慮すると、若者に必要な知識を養わせ、金銭的・感情的・知的自立を完全に達成する上で直面する避けられない課題に学生を備えさせる情動教育の「とりで」となるのに、個人的な成長を遂げ、学びのための学びを行う素晴らしい機関である大学ほど適した存在はないだろう。

高等教育を追求する若者の数が世界で増え続ける中、こうした教育機関は学問・経済・感情の全ての面において、社会のより明るい未来を築く責任と能力があるのではないだろうか?

かつては権威ある科目だった情動教育

哲学者のアラン・ド・ボトンは著書『The School of Life(人生の学校)』の中で、約2000年の間、文学・知的な達成の頂点とされてきた情動教育が「(現代の)エリート文化によって中傷されてきた」と述べている。

ド・ボトンによると、情動教育が衰えた原因の一つは、現代の大学システムで事実と正確性への執着が広がったことにある。ド・ボトンは、情動教育には「いまだに深い関連性があるものの広く軽視されている」と述べている。

ド・ボトンは「私たちの課題は、心の知能指数を(…)情動スキルのカリキュラムに分解することだ。私たちは、この分野で体系的な教育プログラムを始める準備をすべきだ。不公平で残念なことに、この分野は今まで非常に長い間、直感と幸運の領域だと思われてきた」と述べている。

「私たちは、一生かけて情緒的発達を続けるという考え方に焦点を当てることを拒む文化に生きている。これは、こうした脚本がそもそも不可能だからではなく、脚本を書くための関心が傾けられてこられなかったからだ」(ド・ボトン)

今後の世代を導き、その生活を塗り替えるのに現代の大学ほど適切な存在はあるだろうか?

翻訳・編集=出田静

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