65歳以上の人の間での抗うつ剤の使用が増えていることや40代後半で自殺率がピークに達すること、ミレニアル世代の50%が心の健康を理由として仕事を辞めたと報じられていることや、子どもや青年がますます早い時期から心の病の症状を示していることなど、影響を受けていない年齢集団はいない。
各国政府は調査への資金提供や公衆衛生の取り組み、医療関係者への教育などを通して問題を食い止めようとしてきた。しかしそれでも、データは好ましくない方向に動き続けている。
健康の危機か、それとも教育の危機か
心の病との世界での闘いが、医療システムよりもむしろ情動教育が欠けていることに関連しているとしたらどうだろう。私たちは、問題の根本原因を明らかにする代わり、崖の下に救急車を走らせているのではないだろうか?
米国では、従来の言語、数学、科学、歴史、地理のカリキュラムに社会性と情動の学習(SEL)を追加する学校が増えている。また英国でも、教育省は2020年までに学校で心身の健康に関する教育を共通科目とする計画を発表している。
知識は力だ。そのため、学校に通う子どもたちに健康を管理する上で必要な知識を身に付けさせることは適切な対策だと感じられる。それでは大学はどうだろう? 大人の感情教育を塗り替える上でどのような役割を果たせるだろうか?
大学生は、心の健康の分野で最も大きな影響を受けてきた人口集団で、うつ病や不安、自傷行為、摂食障害、自殺念慮を抱える学生の比率は上がり続けている。
残念なことに、典型的な大学生の年齢は、心の病が現れる最も一般的な年齢と一致している。心の病に悩む多くの人が初めて症状を経験するのは、16~24歳だ。
大学での感情教育への需要
心の健康管理アプリ、フィーカ(Fika)は先日、大学生と卒業生の雇用主を対象に、感情教育に対する需要を評価する調査を実施した。その結果は、私たちが予想していたものよりも厳しいものだった。
英国の学生の97%はそのような授業が役に立つだろうと感じていて、96%は情動教育が学生の精神保健の危機を逆転させる役に立つかもしれないと答えた。また65%は、情動教育は人を心の病から守ことができるだろうと答え、52%は情動教育により自分自身や他者をどのようにいたわるかをより深く理解できるだろうと考えていた。
また調査対象となった雇用主の中で、学生に大学の授業として情動・社会教育を提供することがキャリアにおける成功の可能性を大きく改善すると答えた企業はなんと99%に上った。また95%は、若者がより高い感情・社会スキルを備えて労働力の仲間入りをすることを望んでおり、仕事で活躍するのに必要な情動スキルを卒業生が持たないことが多いと感じていた企業は87%だった。