「いい夫婦の日」に妊活文化を広めたい。渋谷区初の配布実験とは

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1年において最も婚姻届を出すカップルが多い「いい夫婦の日」。

将来のライフプランを新婚の夫婦で考えるきっかけにしてほしいと、渋谷区では、11月22日に婚姻届を出した人のうち、希望者に “あるもの” が無料で配布されることになった。

スマホで精子をセルフチェックするキット「Seem」と卵巣年齢をチェックする検査キット「F check」だ。

SeemとF checkいずれも妊活の初期段階にある人たちをターゲットにした検査キットで、それぞれリクルートライフスタイル(浅野健代表取締役社長)とF treatment(白正寛代表取締役)が手がける異なる会社の商品。世の中に妊活の文化を広める機会を、と思いが一致し、一般社団法人「渋谷未来デザイン」に話を持ち掛け、実現することになった。

渋谷未来デザインは、渋谷の社会課題の解決や未来像のデザインに向け、2018年4月に設立された産官学民連携の組織。妊娠から出産、育児にまつわる子育て支援を手掛ける「渋谷区子育てネウボラ」で開催するイベントなども手がけている。

“結婚” の先進例をつくってきた渋谷

日本では出生数が年々下がっており、厚生労働省によると、2018年は91万8397人と過去最低に。1人の女性が生涯に産む子どもの数に当たる合計特殊出生率は1.42、3年連続で低下した。働き方や結婚観などを含む、ライフスタイルが多様化し、晩産化や結婚をしない人が増えているとみられる。

渋谷区では2015年から、全国に先駆けて、法律上の婚姻ではないが、同性カップルに公的な証明書「パートナーシップ証明書」を発行する制度を導入するなど、先進例をつくってきた。

今回は、渋谷区役所の窓口で、午前8時半から午後5時までの開庁時間に婚姻届を出した人の中で、キットの配布に関心のある人たち向けに特設ブースで、意図や使用法などを説明した上で、希望者のみキットを配布する。カップルだけでなく、ひとりで窓口に訪れた場合も対象。いわば、渋谷未来デザインによる区役所で行う、実験的な取り組みだ。

渋谷区ではパートナーシップ証明書の交付を含めて先月1カ月間で206組が結婚した。ちなみに、昨年は11月22日だけで、約160組の婚姻届の提出があったため、この日が人気であることがよく分かる。

精子セルフチェックのseemと、卵巣年齢チェックの検査キットF check
左上が卵巣年齢チェックキット「F check」、右下が「Seem」

では、このSeemとF check、どんな仕組みなのだろうか。

Seemは、採取棒を使って、付属の顕微鏡レンズに精液を1滴垂らし、専用アプリでその動画を解析するだけで、精子の濃度(1ml当たりの数)と運動率(%)を測定できる。アプリ上で実際に精子の動きをチェックできるのが特徴だ。

2016年11月からサービスを開始し、現在はオンラインのほか全国のドラッグストアなどで販売されている。これまでアプリがiPhoneのみ対応していたが、先月からAndroidにも対応できるようになり、ユーザーが広がっている。通常の価格は3980円。

F checkは、キットを使って指先から0.1mlの血液を採血し、郵送すると、1~2週間ほどで卵巣年齢の結果が専用サイトのマイページ上で分かる仕組み。卵巣年齢とは、「卵巣の中に残っている卵子の数が、その年齢の平均値と同水準かを表すもの」としている。今年7月からオンライン上で販売し始め、通常の価格は1万9980円だ。

いずれも在宅で使用し、妊活を始めるタイミングや不妊治療の検討に役立てることができる。
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文=督あかり

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