だが、それよりも重要な問題は、この株式取得は「高値づかみ」だったのではないかという点だろう。というのも、カイリー・コスメティクスがブランドとして今後生き残っていけるかどうかは、今も多くの人から疑問に思われているからだ。
実際、楽天インテリジェンスの調査によると、カイリー・コスメティクスのオンライン売上高は16年のピークから今年5月末までに62%減っている。同月末までの1年でみても14%の減少だ。
また、全体の6割は購入が1回だけにとどまっており、「消費者のロイヤルティーを生み出せていない」(同調査)と指摘されている。
18日の電話会議でも、こうした点から今回の取引に疑問を呈する声がアナリストから相次いだ。
ドイツ銀行のファイザ・アルウィーは「一時的な流行にすぎないかもしれないブランドに、なぜこれほど高い金額を支払う必要があるのか分からない」と発言。今年投入されたスキンケアラインについても「実績に乏しい」と切り捨てた。
エバーコアISIのハビエル・エスカランテも「カイリーに生き残る力があると示すものは何なのか」と率直な疑問をぶつけていた。
こうした声に対してCFOのテリスは、カイリー・コスメティクスの売上高は18年以降に40%伸びていると反論し、「このブランドはもっと拡大し、一段と力強くしていくことができる」と強調した。
コティによるカイリー・コスメティクスへの投資は、化粧品市場の最近の動向からも懸念されている。化粧品はここへ来て、業界全体で販売が鈍化する兆しが出ているからだ。Z世代を中心に、女性が以前よりも化粧をしなくなってきたことが背景にある。
市場調査会社シビックサイエンスの調べによれば、18〜24歳の女性で毎日化粧する人の割合は15年の50%から現在では38%に下がっている。一方、Z世代の女性で一度も化粧したことがない人の比率は、同じ期間に12%から27%に上がっている。