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ビジランテとその刺激的な動画は、16年10月25日にデビューした。その日、フレームはチームを鼓舞するため、リトルイタリーの老舗レストランで全員に夕食を振る舞った。前菜に続きパスタが出てくる前に状況が大きく動いた。

「300程度だった閲覧数が一気に2万7000になり、10分後には5万4000に達したのです」

ビジランテは翌朝にはオンラインコミュニティ「Reddit(レディット)」でトレンド入りしたが、同時にアップルとニューヨーク市警察(NYPD)の目にも留まっていた。元NYPDの本部長で、現在はシティズンの取締役であるブラットンは語る。

「私はビジランテには反対でした。犯罪マップは人々を不安にさせ、捜査を妨害する輩が出てくる可能性もあったからです」

動画配信の数日後、フレームはアップルからの電話を受けた。ビジランテがアップルストアのレビューガイドラインに違反しているというのだ。フレームは、犯罪と戦うためではなく安全のためのツールだと抵抗したが、「自警団」を意味する名前とビデオがネックとなり、ビジランテは配信を停止された。

フレームは、数カ月にわたって毎週アップルに新たなプレゼンテーションを送り、社名も「ビジランテ」から「シティズン」に変更。マーケティング用のメッセージを「犯罪撲滅」から「高い安全意識」に修正した。数カ月にわたる交渉を経て翌17年3月、アップルはようやくアプリの再配信を認めた。

フレームは言う。

「アプリの内容はまったく変更していません。ビジランテという名前が失敗だっただけなんです」

現在もシティズンは、広告なしのプラットフォームで、いかに利益を生み出すかという問題を抱えている。とはいえ、年間数十億ドルがセキュリティ対策に使われている現在、大きな利益を生む公共事業型企業に変貌する可能性もシティズンにはある。

19年秋にはシティズンの新バージョンが登場する予定だ。フレームはビジネスモデルについて多くを語らないが、広告の掲載やユーザー情報の提供によって利益を上げることはないと明言した。

「ユーザーの安全を守るためのビジネスですから」

現在のフレームは、かつてハッカーとして政府のシステムに侵入して検挙され、投獄されかかった10代の頃とは違う。

「裁判官が保護観察処分にしてくれてからは、信号無視だってしたことはありませんよ」。


citizen(シティズン)◎アメリカでは公開されている警察無線などの緊急事態の情報をデータ化、ユーザーのスマホにアラートなどを発信するサービスを行うアプリ。2017年、ニューヨークでローンチ。現在ではサンフランシスコのベイエリア、ボルチモア、ロサンジェルス、フィラデルフィアをカバーしている。

Andrew Frame(アンドリュー・フレーム)◎シティズンの創業者兼CEO。1997年、インターネットプロバイダを経営していた17歳のとき、
NASAへのハッキングの罪でFBIに検挙された経験も持つ。その後、ネット電話ツール開発などを経て、シティズンを創業した。

文=スティーブン・ベルトーニ 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=松永宏昭 編集=森裕子

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