通常の「Amazon」レビューへの弊害
イタチゴッコにより、悪徳業者と戦うAmazonの見極め能力が向上し過ぎて、ある弊害を生んでいる。
それが「普通のレビューが投稿ができない」という事態だ。これは筆者の実体験でもあるが、先日初めて「これはいい!」と思った商品に星5を付け、購入を検討している人の参考になるよう想いを込めて800字程度のレビューを書いたら「掲載されない」事態になった。あくまで好意で書いたレビューすら弾いてしまうレベルまで、チェックが厳しくなってしまっている。
ここに書いたような背景を知っている筆者としては、「Amazonが悪いと思わないし、被害者でもあるから攻めることもできない」と思ったが、事情を知らない人だったらどう思うだろうか?
「法律によってステマの防止策を!」と思う人もいるかもしれないが、現時点で日本でもWOMマーケティング協議会という口コミマーケティングに対する注意喚起を行う組織は存在する。
以前取材をしてみたが「法律で規制するのは難しい」という回答だった。それは「誰が誰に対して、金品や物品を渡し、その人が関係性を明示しているか」の判断が難しいからだ。
「中国業者からギフト券をもらって高評価している」ことが悪いことではなく、「中国業者からギフト券をもらっていることを“隠して”高評価している」ことが問題だからだ。レビューの文中に関係性の明示(例:提供、モニター)と入っていれば、読んでいる人も「これは提供を受けているから悪いことを書けない」と理解できるからだ。だから「ステルス(隠している)」マーケティングと言われる。
正直、芸能人やインフルエンサーだけでなく、一般消費者まで巻き込んだ現代のステマは根が深い。仮にAmazonが口コミレビューを廃止したとしても、同様の問題はほぼ間違いなく、別の口コミサービスで起こってしまう。
2000年、ブログ文化が台頭した時からステマは問題視され、数年に一度このような大手企業の実態が話題に挙がるが、しばらくすると……ということの繰り返しだ。またインターネットになると、日本の法律の範囲でくくれない問題にも発展する。
ただ20年前と比べて、芸能人や著名人だけでは済まない問題に発展していることは間違いない。一サービスに改善を期待するだけでなく、いよいよ消費者庁や国家間で本格的に口コミ対策に取り組まないと“誰も信じられない”世界になってしまうかもしれない。