ビジネス

2019.11.21

「ブリッツスケール」は多様な人に力を与えるテクニックだ

SFIO CRACHO / Shutterstock.com

リンクトイン創業者のリード・ホフマンが書いた『Blitzscaling(ブリッツスケール、未邦訳)』の共著者で、女性起業家向けのアクセラレーター「Women’s Startup Lab」のアドバイザーも務めるクリス・イェ。彼はブリッツスケールを、実用的な「テクニック」だと語る。


いつブリッツスケール(飛躍的な成長)の戦略を採用するかは、価値ある勝者総取り(ウィナーテイクオール)市場を狙えるかどうかを見極めることが必要です。急激な成長を推し進めるには代償が伴います。もし財務上のリターンのみを考えるのであれば、より時間をかけて成長し、効率的に進めたほうがよいでしょう。しかし、一番手で市場シェアを勝ち取ることにより、その後市場のリーダーとして後続を引き離し、数年、数十年その位置を維持できそうなのであれば、ブリッツスケールの代償に値します。

リード・ホフマンはリンクトインの共同創業者であり、フェイスブックやエアビーアンドビーの初期投資家のひとりです。グーグルの元CEOエリック・シュミットともよき友人です。ホフマンと私は、シリコンバレーで成功した企業やその経営者に話を聞き、共通のパターンを見つけました。

ブリッツスケールを成功させるためには、4つの成長要素が必要です。1. 成長に十分な市場規模があるかどうか、2. 最適な流通経路があるかどうか、3. 高い利益率が見込めるかどうか、4. ネットワーク効果があるかどうかです。また、成長を妨げる2つの制限要素は、1. 製品・市場適性の欠如と、2. オペレーションの急激な拡大の限界です。

スタートアップにとって製品・市場適性を見極めるのが難しいという声をよく聞きますが、間違ったメトリクスを使っていることが原因です。ユーザー数を維持できているか、料金を支払い続けているか、顧客離れなどを見ていますが、これらはすでに起こっていることの指標です。先を見据えた、キーとなる指標を2〜3見つけることが重要になります。例えば、ユーザーが1日にどれくらい製品・サービスを使っているかという利用の集中度、または日、週、月に一度は必ず使っている、など利用の規則性です。これは明らかな製品・市場適性のシグナルです。

ブリッツスケールはシリコンバレーの企業だけのものではありません。そして、シリコンバレーと日本のエコシステムは異なります。日本を訪れて多くの起業家たちにも会いましたが、世界のほかの国と同様、野心的で能力のある人たちばかりです。恐らくスケールを難しくしているのは、日本の起業家にとって失敗のコストがかなり大きいことがあるでしょう。ブリッツスケールの環境を整えるためには失敗のコストを下げることが最良の方法です。また、数十年も続く大企業が多く、そうした企業にとって優勢なビジネス環境ですので、ブリッツスケールにおいて「パートナーシップ戦略」を追求するという方法も考えられます。大企業にイノベーションや成長の機会を提供する代わりに、米国におけるベンチャーキャピタリストのようなリソース・キーパーとしての役割を担ってもらうのです。
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構成=岩坪文子

この記事は 「Forbes JAPAN 真のインフルエンサーとは何だ?」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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