「ハートドリブン」はクリエイティビティを圧倒的に高めるための処方箋だ

(左)アカツキCEOの塩田元規氏 (右)予防医学博士の石川善樹氏

「目に見えないものを大切にする力」

「“魂”を進化させるとあなたはもっと輝く」

東証一部上場企業のCEOが上梓する書籍のメッセージとしては、異色と言ってもよいだろう。アカツキCEOの塩田元規氏の初めての書籍となる「ハートドリブン」には、論理や理性だらけのビジネスの世界で、情緒や感情を起点とする、新しい経営のあり方が提示されている。

不確実性の高い時代だからこそ、外側に目を向けて変化に流されるのではなく、自身の内側に目を向け、そこを進化させていくべきではないか──。

この価値観がきっと、次代の経営の新たな基準になる。そう思い、Forbes JAPANでは、塩田氏が「いま語り合いたい」と熱望した5名との連続対談を始める。第1弾は、「well-being」を提唱する予防医学博士の石川善樹氏。

G1サミットで同じグループになったことから親交を深め、ファーストネームで呼び合う旧知の仲だからこそ、絶えない笑いの中に深い共感が起こる時間となった。

「何をするか」と「どうあるか」。継続的にパフォーマンスを出すためには、どちらも欠かすことはできない

塩田元規氏(以下、塩田氏):ビジネスの世界って一見合理性が強く見えるじゃないですか。合理性やロジカルさを追求することは、効率が良さそうだけど、実は非効率だ、という思いがあったんだよね。

人間には、心があって感情があるのに、それらを切り捨てて、会社や組織に適合させてしまうと、長い目で見ればエンジンを回し続けられない。継続的に心の満足が一致していないといつかガス欠になる。これは自分の経験からも、そう感じてもいて。

僕自身、人生のプロセスの中で、「感情を切り捨てて成果を出す」とがんばっていた時期もあったけれど、感情に蓋をしたら自分が疲弊するし、組織単位で見ても嘘偽りが多い組織になることを痛感もした。

世の中はDO(何をするか)の話で溢れているけれど、善樹くんの活動テーマである「well-being」と、「well-doing」の両方を重ね合せることこそが、ハイパフォーマンスにつながる。BE(どうあるか)は非効率だと思われがちだし、BEとDOはトレードオフだと思われがちだけど、そうではないということを、書籍には書きました。

石川善樹氏(以下、石川氏):人間である・ただそういう人間であるっていう、BEINGという発想と、何かをするっていうDOINGの発想。この違いは何だろうって、よく考えるけど、因果関係に生きている人は「何したらいいの?」って聞く傾向にある。

目標とか逆算が好きな因果関係に生きている人はDOの人、ご縁とか因縁みたいなことを大事にしている人は、BEの人っていうイメージ。どちらが良いとか悪いということではなくて、自分がどちらの生き方がしっくりきているかが根本にはあると思う。

塩田氏:すごく興味深いね。経営者の仕事は、幸せの物差しとなるBE(どうあるか)とDO(何をするか)、二律背反するものをどう統合していくのかだと、常々思っていて。というのも、BEがなくてDOだけという人もいるけど、それではゴールが見えないでしょう。何をやるかっていうのも、どうありたいかによって変わるから。
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構成=伊勢真穂 写真=小田駿一

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