香田:アカツキのアウトドア・レジャーの予約サイト「そとあそび」のフィルムアワードの審査員を引き受けてもらったことをきっかけに、賢児さんと何度か食事に行きました。ちょうど「ULTRA JAPAN」を開催して、お子さんも生まれたばかりの時でしたね。そこでご自身の考え方にも大きな変化があったと言う話が、僕の頭の中に残っていたんです。
賢児さんと話して気がついたのが、「キッズパーク」が多くはないということ。アート・バーゼルやゲームショー、昨年までのコンプレックスコンも子どもが遊べる場は用意していなかった。シャンパンラウンジは見かけるけど、キッズパークってないよね、と話していたんです。
こういったビジネス視点でもそうですが、他の親になったばかりの人の話を聞いていても、大人も行きたくなるようなキッズパークが必要とされている手応えはありました。あまりロジカルなスタートではないかもしれませんが、定量的な話も全部含めてつながっていくことのほうが、可能性があると思うんです。
僕は、親という当事者としての深いニーズはつかめていなかったから、リアルな感覚を持つ賢児さんと組むことなしに形にはできていなかったと感じています。
横浜駅直通複合型エンターテインメントビル「アソビル」に入居する「PuChu!」は完全予約制。
小橋:「PuChu!」の構想が固まりつつあったのは、子どもが生まれて、ライフスタイルが大きく変わった時期でした。それまで、週末はおしゃれなレストランやクラブにも行っていましたが、子どもがいたら、そんなことなかなかできない。
そして、週末に家族とどこへ行くかを考えた時、何か子どもの中に残る体験をさせてあげたいと思っていたんです。父親として、幼い頃からセンスのいいものに触れることのできる機会があれば、とことん提供してあげたかった。
同時に僕も、子どもと一緒に刺激を得ることができるような場所を求めていました。既存の子どもの遊び場を否定する訳ではないのですが、子どもが生まれた途端に、自分のセンスには合わない場所しか選択肢がないのはおかしいと思っていました。子どもがいるから「ダサいこと」も我慢しなきゃいけないなんておかしい、と。
子どもを取り巻く環境が自分ごと化したからこそ生まれた、モヤモヤとした感覚を抱いていた時期でした。そういう意味でも、本当にタイミングよく「PuChu!」を世に出せたと思っています。
香田:横浜の「PuChu!」も、今年の5月にできたばかりで、まさか同じ年にコンプレックスコンに出展するとは思ってもみませんでした。運営サイドがなんとなく感じていたニーズがそこにはあり、自信もあったから実現できたスピード感だったと思うんです。
こうして手応えも感じているから、また他の場所でも「PuChu!」を賢児さんたちのような家族に届けたいという気持ちは大きくなっています。