未来食を科学診断。「3Dプリンターで料理」の30年後は来るか

人工的食品、青いスパゲッティ(写真=Forbes Israel)


「ケール(注:「青汁」の材料としても知られる)」は、もうおなじみの例だろう。濃い緑色のこのスーパー葉野菜は繊維質、ビタミン、ミネラル、抗がん物質を豊富に含んでいる。販売業者は商品を売りこむのに「スーパーフード」というラベルを活用しようとするかもしれないが、未来の健康通の食卓でスーパースターとして扱われるのは、ケールのような天然のスーパーフードや、それに類する食品だ。

健康的な食事に対するもうひとつのいわば「ローテクな」答えが、藻類だ。藻にはどの果物や野菜よりも多くのカルシウムやタンパク質、鉄分、ビタミン、ミネラル、繊維質、抗酸化物質が含まれている。

この水生植物は、魚と同じく池で養殖できるが、魚よりずっと安く、また豊富に作れる。藻類は、環境破壊を最小限に抑えながら世界の空腹を満たす、理想的な非動物性食料源になるかもしれない。

「遺伝子操作」が世界を助ける?

未来の食を改善するという難題は、遺伝子操作問題とは切っても切り離せない。遺伝子操作の助けを借りれば、アレルギーを引き起こさないピーナツや水害に強い米の品種を作ることができる。

テルアビブ大生命科学部学長で、遺伝子操作の提唱者としても知られるダニー・チャモヴィッツ教授は、遺伝子操作が環境や健康に害をもたらすことはないことを周知することが重要だ、と考えている。

「ただ遺伝子を、こちらからあちらへと動かすだけの話です。交配と一緒です」と教授は言う。「20年間にわたって世界中で作られてきた遺伝子操作による品種で、病気や死亡の原因になった例はありません」。

教授は、遺伝子操作に対する恐怖感が研究を遅らせているだけ、と言う。グリーンピースのような団体からの抵抗は世界に損失を与えるだけで、多くの場合、命を救う、そして命をよくする研究を妨げてしまうと、教授は語る。

グリーンピースのメンバーは、まったく逆の主張をしている。たとえその害が証明されていないとしても、人が長年利用してきた物質の多くは有害だと。彼らは、ますます気候変動が悪化する中、いわば「すべての卵をひとつの籠に入れる」ようなリスクは冒せないと信じている。

「農業の多様性を維持することは、未来の食料確保に対する『保険』のようなものです。わずかな品種が世界の食料源を占拠してしまうことは、有害無益です。遺伝子操作を促進している農業系の複合企業は皮肉にも、世界の飢餓と欧米人の罪悪感を悪用して、商品を売りつけているのです」。

テルアビブ大学「マナ食料安全プログラム」所長、ニル・オハド教授は、「現状維持のためだけにさえ、さらなる努力が必要」と確信する。われわれが、人と日々のパンとの間に立ちはだかる複雑な課題を踏まえて本当に問うべきなのは、皿にどのような食品を乗せるべきかではなく、「その食品がどうやって皿の上にまでたどり着いたか」だ。

文=アヴィ・ゲルツマン 翻訳=松本裕/トランネット 編集=石井節子 写真=Forbes Israel提供

ForbesBrandVoice

人気記事