未来食を科学診断。「3Dプリンターで料理」の30年後は来るか

人工的食品、青いスパゲッティ(写真=Forbes Israel)




未来の重要な動物性タンパク源、「昆虫」

食の専門家たちは、近いうちにヒトは、「動物性タンパク」に代わるものを見つけなければならないと確信している。その解決策が、実は、私たちの鼻先にあり、発展途上国の一部ではすでにおなじみの主食となっている。そう、昆虫だ。

「バッタを食べるのは、牛を食べるのとどう違うというのでしょう?」と問うのは、機能性食品メーカー、「トレンドラインズ・アグテック」CEO、ニッツァ・カーディシュ博士だ。

「結局のところ、私たちはステーキを食べるときに牛のことは考えないし、シュニッツェル(仔牛肉をカツレツにした西洋料理)を食べるときにニワトリの姿は思い浮かべませんよね。要は、感じ方の問題ですよ」

アフリカや極東の人々はすでに、昆虫をまるのまま食べることに慣れているかもしれないが、欧米人にとってはステーキやバーガー、マッシュポテトといったおなじみの食品の「代用品として加工された」粉末昆虫のほうが、まだ受け入れやすいかもしれない。

工業規模の昆虫養殖はまだ現実にはなっていないが、一部のイスラエルの企業が最近、昆虫を主原料とする食品を商業的に生産しはじめている。待ちきれない? 心配ご無用。「冷凍バッタのシュニッツェル」が完成間近だ。


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答はもっと簡単だ、という者もいる。栄養学的観点からは、肉の代替品などそもそも不要、というのだ。

「タンパク質と鉄分を提供してくれる植物由来の食品もあり、コレステロールや飽和脂肪が不足するということはありません」と語るのはアノニマス・フォー・アニマルライツのヒラ・ケレンだ。ケレンによれば、ハイテクな解決策に頼らなくても美味しい代替品を見つけるのは簡単だそうだ。

「大手のカフェチェーンはどこもヴィーガンのオムレツを提供しています。ベーカリーはヴィーガンのパイやケーキ、クッキーを焼いています。ステーキハウスでさえヴィーガンのバーガーを提供するようになっていますし、もちろんネット上には何千ものレシピが存在します」

「藻」というスーパーフード

ともかく、昆虫の栄養価が高いのは有名な話だ。従来のタンパク源に代わる賢い代替品である以上に、昆虫は栄養強化に活用できる。ハーパズ博士が言うように、未来の食を考えると優先されるのは健康で、新たな品種の開発研究でも、やはり健康に焦点を当てるべきなのだ。

そうなると、2050年の食にはより多くのスーパーフードが含まれることになりそうだ。ここでいうスーパーフードとは、典型的な欧米の食を構成するものよりも、ずっと健康的な栄養価を持つ食品を指す。
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文=アヴィ・ゲルツマン 翻訳=松本裕/トランネット 編集=石井節子 写真=Forbes Israel提供

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