定年後の暮らし方を考える3つのキーワード

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家族構成にかかわらず自分が生きてきた証を残したいと考える人もいるだろう。また、人生の最期にどう対処するのかというエンディングに留まらず、もっとポジティブに人生の最期までをどのように生きるのかウェル・エイジングという考え方もある。

高齢期を「よく生きる」とは、自分自身が社会の中で「よく活きる」ことだ。最期まで活き活きと暮らすためには社会との関係性を維持し、何らかの社会的役割をデザインすることが必要だ。「終活」は人生の最期を前向きに迎えるための「老い支度」であり、自分が社会の中で新たな役割を獲得する「就活」と言えるかもしれない。

上手な「ストック」暮らし

人生100年時代を迎え、定年後の生活設計を考えるセミナーをよく耳にする。ある資産投資セミナーの資料には、「毎月収入のある『フローの生活』から、資産を使う『ストックの生活』へ」という言葉があった。高齢期の暮らしには次の3つの資産活用が大事になるだろう。

資産活用の第一は、やはり「お金」だ。これまでは仕事で得られる毎月の収入による生活から、今後は年金や預貯金を中心にした暮らしを維持しなくてはならない。長くなった老後を安心して暮らすためには、これまで蓄えてきた預貯金などの資産活用が重要になるのだ。

フローからストックに移行するのは「お金」だけではない。60歳を過ぎると「体力」という健康資産が大切になる。ウォーキングや水泳などで持続的に無理なく体を動かし、「体力」の目減りをできる限り食い止めることが必要だ。日本人男性の日常生活に支障のない健康寿命はわずか72年程度であり、それを延ばすための鍵を握るのが「体力」という健康資産の管理だ。

第三は、「仲間」という交友関係資産の活用だ。高齢期には地域の居場所づくりが重要だが、その実現には地域や趣味の仲間の存在が必要だ。高齢期に新たな人間関係を築くことは難しく、これまで培った交友関係から仕事を超えて付き合える仲間との関係を大切にしたい。

2013年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、段階的に希望者全員が65歳まで継続雇用を保障されるようになった。60歳から65歳の間は、「フロー」から「ストック」の生活への移行期間であり、本格的な退職後の高齢期に向けた暮らし方や新たな家族・地域との関係性を再構築する時期だ。

今後の長寿時代を幸せに過ごすためには、現役時代に「お金」、「体力」、「仲間」という資産をバランスよく形成し、これら3つの資産活用により上手な「ストック」暮らしを実践することが重要だろう。

人生100年と言われる長寿時代を生き抜くことは思いのほか大変なことだ。企業勤めの人が定年後の長い高齢期を幸せに過ごすためには、新たなライフデザインが必要であり、定年後に考え始めていては手遅れになりかねない。少なくとも還暦を迎えるまでに定年後の暮らし方を模索しておくことが必要ではないだろうか。

連載:人生100年時代のライフマネジメント
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文=土堤内昭雄

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