ANTAのブランド名で知られるスポーツ衣料の「アンタスポーツ(安踏体育)」の株価はここ1年で2倍以上になり、同社を率いるビリオネア兄弟のDing ShizhongとDing Shijiaらの資産はそれぞれ56億ドル(約6010億円)と55億ドルとされた。
今年5月に米ナスダック市場でIPOを果たした、中国版スターバックスの異名をとる「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」からは、会長のCharles Luに続いて女性CEOのJenny Zhiya Qian(銭治亜)がビリオネアの仲間入りを果たした。
「中国は、個人消費の伸びの点で、世界でベストな国と言える」と資産運用会社Matthews Asiaの投資ストラテジストAndy Rothmanは述べている。中国のGDP成長率は近年、下落傾向にあるものの、長期的視野では回復が見込める。
背景には世帯あたりの貯蓄率の高さがあげられるとRothmanは指摘する。彼のニュースレターSinologyによると、米国世帯の貯蓄率がわずか8%程度であるのに対し、中国の貯蓄率は約27%に達しているという。
もう1つ言えるのは中国の市場の巨大さだ。中国市場における小売り販売額のトータルは、米国の約91%に達しているとRothmanは述べている。
テクノロジーの発展によりEコマース大手の存在感は増々、高まっている。アリババの元会長のジャック・マーの保有資産は現在382億ドルとされ、前年の346億ドルからさらに上昇した。また、フードデリバリーから多角化を進めた「美団点評」創業者のWang Xing(王興)の保有資産は、昨年の51億ドルから今年は74億ドルに伸びた。
さらにEコマースの発展は、ロジスティクス分野からも新たな富豪を誕生させた。アリババが支援する物流企業「ZTO」のCEOのLai Meisongの保有資産は昨年の33億5000万ドルから、今年は46億ドルに伸びた。
アリババは先日、別の物流子会社の「菜烏網絡(cainiao)」に対しても、33億ドルを出資すると宣言した。
中国ではファーウェイが主導する5Gネットワークの整備にともない、さらに進化した消費形態が出現することが予想される。中国の富豪リストに今後、新たな顔ぶれが加わることは確実だ。