在米日本人たちの誇り、カリスマシェフ松久信幸という存在

(左)ロバート・デ・ニーロ (右)松久信幸 / Getty Images

(左)ロバート・デ・ニーロ (右)松久信幸 / Getty Images

アメリカ在住の日本人が、心から誇りに思っている在米日本人は、それほど多くはない。松井秀喜やイチローが引退してしまった現在、全国区の有名人としてアメリカで通じるのは、メジャーリーガーの大谷翔平(Shohei)と、日本食シェフである松久信幸(Nobu)くらいだろう。

その松久は、埼玉県生まれ。新宿で7年間、料理の修行をしてから、南米ペルーのリマに渡って独立する。しかし共同経営者との意見が合わず、ペルーからアルゼンチンのブエノスアイレスに移り、そしてアラスカへ移住。ところが、アラスカのアンカレッジで開いた自分の店は火事によってすぐに失うことになる。

苦労に続く苦労の末、ロサンゼルスのビバリーヒルズに「Matsuhisa」を開店すると、世界的に権威があるザガット・サーベイの高評価を獲得して名を挙げる。一気にセレブ御用達の店になり、なかでも常連客だったロバート・デニーロに口説かれ、一緒にレストラン「Nobu」を立ち上げて、その後は多店舗展開へと踏み出す。

ロバート・デ・ニーロとの出会い

超有名人が行きつけのレストランのシェフと意気投合し、自分の名前を冠にしてレストランを出すようなことは珍しいことではない。しかし、松久とデ・ニーロが開いたレストランは「Nobu」であって「デ・ニーロ」ではない。

さらに珍しいことには、このような場合、話を持ちかけられたシェフはあくまでもそのセレブに従属する立場であるが、まさかロバート・デ・ニーロのような有名俳優と同等の立場で共同経営とは、誰も想像しないのではないだろうか。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、この度、ロバート・デ・ニーロと松久信幸にインタビューをするという記事を載せていたが、心からリラックスしている2人の笑顔がとても印象的だったし、そこからは形だけでない真の友情がうかがわれた。

ロバート・デ・ニーロと松久信幸
2005年、ロンドンの「Nobu」のオープニングパーティ(Getty Images)

このNobuレストランはラスベガスにもあるが、かなり創作料理に近い日本食だ。今日、世界に店舗展開している日本食の料理店で、高級店として真っ先にアメリカ人が名前を思い浮かべるのが、この店だと言ってもいい。
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文=長野慶太 写真=Getty Images

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