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基本的なスキルを持っているのは前提として、自社との相性をどう見極めれば良いのか。過去の実績はヒントにはなるが、相性を見極めるうえの十分な材料とはならない。「クリエーターと経営者の関係は、医者と患者の関係に似ている」と菅野は例える。

もちろん能力の高い人が好ましいが、忙しくてなかなか会えないと、その間に病気が進行してしまうかもしれない。だから会えなくても『分かってくれている』と思える人がいいというわけだ。

「それに、主治医のように、長期にわたって付き合える人が良いと思います。だから経営者とクリエーターは、ビジネスやお金のこと以上に、『生理的に合うかどうか』や関係値が重要なんだと思います」

企業が発信するメッセージは、新鮮さを保つため、時代に合わせて柔軟に変化していく必要があるものの、通底している考え方がブレてはいけない。経営者はそのメッセージの一貫性を保つため、自分自身で全てをコントロールしようと考えがちだが、「それは違うのではないか」というのが菅野の考えだ。

先ほどの医者の例えで言えば、病気のことは専門家である医者に任せるように、クリエーティブ領域においても専門家に頼り、その能力を自らの経営の中に取り込んでいくことが重要ということだろう。

「ある領域に対して『意識的であるべき』というのと『全て自分でやるべき』というのは全然違います。クリエーティブを学ぶことは、健康に気遣うことに似ています。健康についていろいろな知識を得るのは重要ですし、意識的になることも必要。ですが、治療は医者、つまり専門家に任せるものです」

信頼して「任せる」という覚悟

ビジネスは9割以上が論理で動くが、クリエーティブは「論理的に判断出来ない1割の部分」に対する決断が9割以上の意味を持つ。まだ見たことのないものを作るには、感覚や経験値が物を言う。つまり、経営者はクリエイターに対して、論理的な部分を共有したら、最終的なアウトプットは自分でやらずに任せてみる──そのための信頼関係と任せる覚悟が必要になってくる。

「全部コントロールしようとすると、クリエーティブはどんどん面白くなくなってしまいます。実際世の中には、『正しいけど面白くないもの』が溢れかえっていますよね。正しいだけでは、コミュニケーションの答えは出せない」

「クリエーティブをどう学べば良いか」とは、昨今よく耳にする質問だが、それは「経営センスを磨くには?」と問うているのに等しいと菅野氏は言う。

経営もクリエーティブも、世界に対して何かを生み出す行為。だからこそ、関係値を保ちながら、任せる部分は任せる。その勇気と覚悟がこれからの経営者には求められているのではないだろうか。

)クリエーティブディレクター 菅野薫氏(右)READYFOR代表取締役CEO 米良はるか氏
(左)クリエーティブディレクター 菅野薫氏(右)READYFOR代表取締役CEO 米良はるか氏

構成=筒井智子 編集=谷本有香 写真=READYFOR提供

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