アメリカの石炭会社、トランプ政権下でも業績悪化続く

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ドナルド・トランプ米大統領は、石炭業界を復活させると宣言していた。しかし経済の力は、同大統領のレトリックをことごとく打ち砕いている。アメリカでもとりわけ厳しい環境で働く労働者として、地下へ潜り、自分たちの健康と生命を危険にさらしながら、数千万の人々にエネルギーを供給している炭鉱労働者たちにとっては残念な話だ。

苦難にあえぐ石炭会社

石炭会社は次々に、不本意な決算を報告し、破産を申請している。現在の石炭価格は、2018年10月に記録された最近の高値から38%下落し、2016年の価格に逆戻りしており、財務的にはきわめて厳しい状況だ。

米石炭最大手ピーボディ・エナジー(Peabody Energy)が発表した9月締め四半期の1株あたり損失は、アナリストの予測よりも悪かった(予測0.41ドルに対して0.57ドル)。前年同期には、1株あたり0.63ドルの利益を出していた。

同社の売上は大幅に減少し、前年同期比21%減の14億ドル(約1524億円)だった。石炭価格の下落は決算に打撃を与えているが、販売量もほぼ9%減の4480万トンにまで落ち込んでいる。アナリストは2020年の1株あたりの損失についても1.07ドルと予測しており、展望はきわめて厳しい。

ブラックジュエル(Blackjewel)は7月1日に破産を申請し、およそ600人の労働者が影響を受けた。同社の炭鉱は別の会社が買収し、10月に採掘が再開したものの、健全な企業の姿とはいえない。

もうひとつの象徴的な例がマレー・エナジー(Murray Energy)だ。株式非公開の石炭会社としてはアメリカ最大、全体でも3位の規模を誇る同社は、10月末に破産を申請した。ピーボディが散々な決算を発表し、ダウ・ジョーンズの米国石炭指数が急落したのと同じころだ。

石炭火力発電所の相次ぐ閉鎖

米エネルギー情報局(EIA)によれば、「2010年から2019年第1四半期にかけて、アメリカの電力会社は546基を超える石炭火力発電所の閉鎖を発表した。その総発電量は合計102ギガワットにのぼる」という。

また、ここ数年の傾向だが、電力会社は以前と比べて、大規模で新しい石炭火力発電所を積極的に閉鎖しているようだ。

EIAによれば、「アメリカで2015年以降に閉鎖された石炭火力発電所は、全体的に見て、2015年以前に閉鎖された発電所よりも大規模で新しい。2018年にアメリカで閉鎖された石炭火力発電所の発電量は平均350メガワット(MW)、稼動年数は平均46年だった。それに対して、2015年に閉鎖された石炭火力発電所では、発電量は平均129MW、稼動年数は平均56年だった」
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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