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現場からの医療改革


2013~18年のデータは文部科学省が全大学について公開しているので、2019年の10大学以外のデータを入手し、比較することにした。ウェブを検索したところ、「ハフィントンポスト」が独自に調査していたので参照した。ハフィントンポストと文部科学省のデータとは一致しないものがあったが、その場合は文部科学省のデータを使用した。


図1 筆者作成

図1は、2019年と例年(2013~18年)の男性合格率/女性合格率の比を示している。X軸が2013〜18年、Y軸が2019年の合格比だ。1より大きいと、女性の方が合格しにくいことを意味する。

全体的にX>1, Y>1の大学が多く、46校(57%)が含まれている。


表1 筆者作成

この表1は2016~18年の入試で男性優位だった大学のリストだ。のべ30校中、16校が国公立大学だ。女性差別の問題は一部の私立大学に限らないようだ。

このような大学で、女性差別が行われているのか、あるいは、入学試験では何らかの理由で、女性より男性のほうが合格しやすいのかは、筆者にはわからないが、いずれにせよ、女性の受験者は、このような大学は避けたほうが無難だ。

「聖域なき構造改革」の結果として

注目は、X>1、Y<1の領域に含まれる大学だ。例年は男性優位だったが、女性優位へと変化した。この群の13校には女性差別を認めた東京医科大学、順天堂大学、北里大学、聖マリアンナ医科大学や、特定の者を優先させていた昭和大学や日本大学も含まれている。

ほかには、筑波大学、金沢大学、鹿児島大学、福島県立医科大学、日本医科大学、東海大学、兵庫医科大学も名前を連ねる。各大学の言い分を聞きたいところだ。

私は、このような大学も女性受験者にはお勧めしない。濱木医師は「私が受験生なら、女性差別をしている大学を受験したくない。女性である自分には不利だし、不正入試が行われるのは、そういう校風だからなので、問題は入試だけではないだろう。学びの場としての魅力を感じられない」と言う。

2019年の入試では、女性合格者の比率が前年より2.3%増えて37.0%になった。前出のハフィントンポストは「東京医大不正入試で2019年の女子合格者が急増?⇒この噂デマでした」と表していたが、これは適切ではない。

女性合格者が2.3%も増加したことは特筆すべき現象だ。なぜなら、入学者に占める女性の割合は2000年代半ばまでは、右肩上がりで増加していたが、その後は33%前後で横ばいだったからだ。

私は小泉政権(2001〜06年)による「聖域なき構造改革」に医学部が対応した結果と考えている。診療報酬が切り下げられ、国立大学の運営費交付金も減額されたため、「安価な労働力」を期待して、男性を優先的に合格させるようになった。男性は結婚しても働き続けるし、出産・子育てで休むことはない。また、「結婚できない」と周囲から反対されても、医者になる女医と比べて男性医師の多くは権威に従順だ。大学病院で無給で働く人が少なくない。病院経営者にとって、男性の方が使いやすく、安い労働力である。この見方は東京医大の第三者調査委員会の結果とも一致する。

つまり、大学病院経営のコスト削減のために、経営陣は自ら身を切ることはせず、女性受験生を犠牲にしてきたのだ。

2018年の不祥事発覚は、少なくとも理不尽な女性差別がただされるきっかけにはなった。求められているのは、文科省、医療界の自浄作用なのだ。

文・図表=上 昌広

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