米倉涼子「悔しい気持ちがエネルギーになる」 日本のトップ女優が海外で挑戦し続ける理由


「悔しい」という思いが大きなエネルギー源になる

ブロードウェイに行ってからは、フィジカルの強度の差や言葉の壁に直面しました。最初は何も知らないので「言われたことは全部やってやる」という覚悟で稽古に臨んだのですが、外国の方は身体の構造や骨格が日本人と全然違い、とにかく演じる時のアクションが強く、体でぶつかってくるということに初めは戸惑いました。

あまりにも外国人の方の力が強すぎて稽古中にぎっくり腰になってしまったこともありました。声量も全然違うので、言われるようにやると喉を痛めてしまうようなこともありました。こうしたフィジカルの差を埋めるために、トレーニングを追加して身体をひとまわり大きくしました。

日本人は意志表示が足りない

言葉の壁も行く度に実感します。ただ、言葉がわからないということと、自分の意志表示をしないということは別のことだと思います。

日本に帰った時によく感じるのは、日本人は意志表示があまり得意ではないということです。自分から「私はこういう人間だ」とパーソナリティを出していく人が少ないように感じます。

私自身「シカゴ」の現場では、意志表示したいと思っても言葉の壁があってできなかったところも多かったですが、気持ちはここにあるのだと行動で表さないと伝わらないと思いました。

ネイティブの人たちの言葉の使い方を勉強して、1日に1語、英語を覚えて現場に行って自分からも共演者たちに話しかけました。これは楽しい作業でもありました。

たとえ言葉が十分に伝わらなくても、混じっていく気があると思ってもらわないといけない。日本人は忖度が上手かもしれませんが、お互い外国人同士で接していると、言葉にしたり行動に移したりしないと伝わらないので、待っていてはいけないと思います。

これは海外での話に限ったことではなく、私は普段から思ったことは何でも言いますし、間違っていたと思ったらすぐに謝ります。

日本のドラマの現場はすごく静かで、特に若い子たちが何をしたいと思っているのかわからなくなってしまいます。静かにしていることが思いやりだと思っているのかもしれませんが、彼ら彼女らがしたいことが伝わらないと、私たちもお願いしていいものなのかわからなくなってしまいます。

喋らなくてもいいので、自分たちは大丈夫ですよという気持ちや意志表示を顔や表情でしてほしいですね。いくらデジタルが発展しても、私たちは生きている人間ですから、そういうやりとりを自分のエネルギーで表現することが大事だと思います。

私自身は、20代の頃、ずっと謝っているような時期がありました。全部自分がいけないんじゃないかと思って、すぐに「すみません」と言っていました。そして、思っていることが顔に出やすいタイプでもあったみたいです(笑)。最近は、「結局、何がしたいのか」というのがわからない人たちがとても多いように感じます。
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文=瀧口友里奈 写真=小田駿一

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