今後はバングラデシュから高度なIT人材を安定して採用できるメリットを打ち出し、さらなるIT企業の誘致を進める。市の担当者は「とがった政策を打ち出すことで、地方は突き抜けられる」とみる。
宮崎大学はキャンパス内にイスラーム文化研究交流棟を設けている(著者撮影)
IT企業のスパークジャパン(宮崎市)は、3人のバングラデシュ人を採用するにあたって社内環境を整えた。彼らの生活面のサポートを行うチューター制度を導入し、イスラム教徒用の礼拝室を設置。バングラデシュ人との交流が、日本人社員にとっても刺激になっているという。
海外から人材を採用するにあたって手厚い受け入れ体制が確立されている背景には、地方ならではのコミュニティーの小ささがある。大学や企業、行政が近い距離にあるからこそ、互いのリソースを共有し、共通の課題に向けて行動を起こしやすい。宮崎市内に就職したバングラデシュ人が日本人中高生向けに英語とプログラミング講座を開講するなど、地元との新しい協業も進んでいるようだ。
「宮崎ーバングラデシュ」モデルは、事前の語学学習や互いの文化理解に時間をそそぎ、行政や大学、企業が一丸となることで、バングラデシュ人が定着しやすい土壌をつくりだしつつある。日本の喫緊の課題である人材不足と、新興国の雇用問題を同時に解決できるモデルに、他地域からも注目が集まり始めている。
海外からの人材採用は、足りない穴を一時的に埋める手段ではない。日本人、外国人という括りではなく、一市民として同じ土俵で活躍できる環境を整えることが、今後日本各地で求められる。
連載:アジアのみちばた経済
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