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2019.11.23

高度なIT人材をバングラデシュから。宮崎市が目指す新しい経済モデル

スパークジャパンでは3人のバングラデシュエンジニアが活躍している(著者撮影)

日本で高度なIT人材の獲得競争が過熱している。経済産業省などの調査によるとIT人材の不足数は2018年に22万人に達した。人材は東京などの首都圏に集中しており、地方ではさらに採用しにくいという。この課題を解決する新しい経済モデルが宮崎県宮崎市とバングラデシュから生まれようとしている。

経済成長率が平均6%を超える南アジアの国、バングラデシュ。日本の国土の4割ほどの面積に1億6千万人が暮らし、2021年までに中所得国、2041年には先進国の仲間入りをするビジョンを掲げている。近年では国をあげてエンジニアなどのIT人材の育成に取り組んでいる一方で、バングラデシュ内には雇用先が少なく、希望の職種につける人が少ないのが実情だ。

そんな彼らを高度IT人材として日本で採用するのが「宮崎ーバングラデシュモデル」だ。

このモデルは宮崎のIT企業群や宮崎市、そして宮崎大学などが主導する。2017年からプログラムを開始し、これまでに約100人のバングラデシュ高度IT人材を日本に輩出してきた。バングラデシュでは宮崎大学から派遣された日本語の教員などが3カ月の集中トレーニングを実施。日本語やビジネスマナーなどを教える。毎回100倍を超える数の応募者が殺到するという。


経済成長が著しいバングラデシュ(著者撮影)

宮崎市内の企業に採用が決まったバングラデシュのエンジニアたちは、来日後に宮崎大学で3カ月の語学研修をうける。彼らを採用する日本の企業が研修費を負担する仕組みだ。宮崎大学の村上啓介副学長は「大学内で異なる人種や文化が交わることで、新しい発見も生まれる。バングラデシュの方々のような磨けば光るダイヤのような人材をこの先も育成していきたい」と意気込む。

宮崎市はIT企業に補助金を給付し、ITの力で地域を活性化する取り組みに力を入れている。市内に拠点を構えるIT企業は10年間で45社増加した。宮崎市では中心地の空洞化が進んでいるほか若年層の流出が課題となっているため、開発などの仕事を扱うIT企業を積極的に誘致し、地元の職の選択肢を増やそうとしている。
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文・写真=土橋美沙

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