ビジネス

2019.11.18

トランプのアマゾン嫌いを鮮明にした「1兆円クラウド」の入札

(左から)ドナルド・トランプ米大統領、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO、アマゾンのジェフ・ベゾスCEO

アマゾンは11月14日、米国防総省が110億ドル(約1.2兆円)相当のクラウド事業の委託先にマイクロソフトを選んだことに対する抗議声明を発表した。この案件は「JEDI(ジュイダイ)」と呼ばれるもので、アマゾンは当初、入札段階でマイクロソフトよりも有利と見られていた。

アマゾンは「ジェダイの評価過程において明らかな偏見があった」としている。この件の背景には、長年に及ぶジェフ・ベゾスとドナルド・トランプの対立がある。

トランプとベゾスの戦いが最初に注目を集めたのは2015年12月にさかのぼる。当時、大統領戦への準備を進めていたトランプは、ベゾスが「ワシントン・ポスト」の社主を務めていることについて「アマゾンの税負担を引き下げるためだ」とツイッターで述べた。

これに対しベゾスは、からかい気味に、「月に向かうブルー・オリジンロケットにトランプの座席を確保しておくよ」と投稿した。

大統領に就任後のトランプは、さらにベゾスとアマゾンに対する怒りをあらわにした。ニュースサイトAxiosによるとトランプは、アマゾンが米国の小規模店舗を壊滅させ、税逃れをしていると主張した。さらに、「アマゾンは合衆国郵便公社(USPS)をアルバイトの高校生のように都合よく利用し、国民の血税を自社が儲けるために使っている」とトランプは指摘した。

トランプはまた、ワシントン・ポストが度々、彼に関するネガティブな話題をとりあげることが不満で、「この新聞はプロパガンダ・マシーンだ」と述べている。

さらに、今年1月にトランプはベゾスのことをツイッターで、ジェフ・ボゾ(ボゾは間抜けの意味)と呼びつつ、「ナショナル・エンクワイアラー」がベゾスとローラ・サンチェスの不倫を暴露した件について投稿した。

ベゾスは2月、ナショナル・エンクワイアラーの親会社のAMIを率いるデヴィッド・ペッカーが、トランプと結託して彼を脅迫したとして非難した。脅迫メールには彼がサンチェスと撮影した下半身のセルフィーが含まれていたという。

アマゾンは11月14日、ジェダイの選定プロセスに抗議する旨の文書を米裁判所に提出。ジェダイの入札プロセスでは当初、アマゾンが有望と見られたが、トランプが評価プロセスに疑念を示したことで、マイクロソフトが選定されたと報じられている。

アマゾンのAWSの広報担当は先日の声明で、「わが国にとって重要なのは、政府や指導者らが、客観的な判断を行うことだ。ジェダイの評価プロセスには、多くの面で明らかな不備や誤り、偏見があった」と述べていた。

編集=上田裕資

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