ペストは14世紀のヨーロッパで黒死病と呼ばれ大流行し、約5000万人が亡くなっていた。今年の初めにもモンゴル人の夫婦が生肉を食べた後に腺ペストを発症して死亡したほか、米国のコロラド州郊外ではペストに感染したプレーリードッグが射殺されていた
米国疾病管理センター(CDC)によると、人間がペストに感染するケースは米国の僻地でも確認されているが、アジアや東南アジア、アフリカでの発生頻度のほうが高いという。CDCのデータでは、過去数十年の間、米国では毎年約7人がペストに感染しており、最後にペストによる死者が出たのは2015年のことだった。
ペストは野生動物の間でノミを通じて媒介されるケースが多いが、人間がペットとして飼うイヌや猫が感染する場合もあるという。現代の医療では、ペストにかかっても初期段階であれば抗生物質による治療が可能だが、ペストの感染を予防するワクチンは存在しない。
「14世紀の黒死病のような規模で、再びペストの大流行が起こる可能性はほぼゼロに近い」とイェール大学医学大学院のJames Shepherd博士は述べている。「ペストは動物由来の感染症であり、米国でもごくまれにハンターなどが感染するケースが見られる」
ただし、ペストは完全に絶滅した感染症ではない。世界保健機関(WHO)によると、2010年から2015年にかけて世界で3200件以上のペストの感染が確認されており、584人が死亡していた。WHOは近年、ペストが再流行の状態にあると述べている。
近年ペストの感染が増えている国としては、マダガスカルやコンゴ民主共和国、ペルーがあげられる。マダカスカルでは2017年に2348人がペストに感染し、202人が死亡していた。