OKでもHeyでもない。「ねぇ」で勝負に出たアイリスオーヤマの音声認識テレビ

記者発表で並べられたアイリスオーヤマ初の大型液晶テレビ

OKでもなければ、Heyでもない。“ねぇ” で黒物家電に乗り込んできたアイリスオーヤマ。同社初となる液晶テレビは「音声認識」を携えての登場となった。

大画面薄型液晶テレビ「LUCA」(るか)は、11月20日よりフロントスピーカーモデル、12月5日よりベゼルレスモデルを発売する。価格は、上位モデル55型でフロントスピーカーモデルが13万4000円、ベゼルレスモデルが65型で18万8000円(ともに税抜)と非常にこなれ感がある。

4年に一度のビッグイベントを来年に控え、我が家のテレビをどうにかしようと考えている家庭は多いのではないか。実際、日本の薄型テレビ市場は活気づいており、4K対応50型以上の国内出荷実績*で言えば、2019年9月時点で、前年対比146%の伸びとなり8月は200%を超えていた。4K・8K放送も始まり、いよいよ盛況の只中にある。
(*一般社団法人電子情報技術産業協会2019年民生用電子機器国内出荷統計より)

盛況とは戦国を表す。日本には強大な家電メーカーが存在し、黒船と称される海外勢も攻撃の手をゆるめるはずはない。アイリスオーヤマといえば、「くらしをもっと快適に」のキャッチフレーズでLEDライトやサーキュレーターといった、価格と機能をバランスさせた商品力で知られ、生活家電の印象が強い。しのぎを削る既存ブランドたちにどのような刀でいどむのか。

アイリスオーヤマは、割って入らない。着実に陣地を獲ることにした。アイリスオーヤマ家電事業部統括事業部長 石垣達也は、「日本の薄型テレビ市場は多機能・高価格帯の一面と、実際はもうひとつの選択肢、単機能・低価格という二極化」だとし、後者を選んだ。

同社は〈なるほど家電〉という開発コンセプトを持つが、これは使う側の視点を持った開発方針のことで、シンプルな発想が主戦場ではないポジションを選択させたのだろう。「LUCA」は機能を絞り、いかに快適にテレビを見るかに特化し価格をぐっと抑えることに成功した。

「ねえ、るか。テレビをつけて」


単機能・低価格の大画面液晶テレビ「LUCA」。その最大の特徴は、音声認識だ。ただ最初に記しておこう。「LUCA」の音声認識はスマートデバイスを使わない、いわば音声リモコンだ。

アイリスオーヤマ初の液晶テレビ
ベッドとテレビの間の壁に取り付けられてあるのがそうだ。じゃまにならないギリギリの大きさだ

仕組みはこうだ。

音声認識回路とマイクを内蔵した音声操作リモコンが、聞き取った指示内容を赤外線コードに変換。信号としてテレビに送り操作となる。常時ONの状態のリモコンであるため起動に要する時間がなく、また、スマートデバイスを介す時に起りがちな微妙な反応の遅れがないことは強みだ。

アイリスオーヤマの液晶テレビ用の音声認識デバイス
幅68mm奥行き29mm高さ85mmの壁掛けタイプ

音声操作を起動するために「ねえ、るか」または「るか、てれび」を発話する。

「てれびをつけて」「おとおおきく」「びーえすほうそう」「よんちゃん」といったあらかじめ決められた基本的な27種類の操作ワードで操作。家族の誰が話しても、寝起きで声が出にくいときも、できるだけ正確に発話を認識するために、「ニューラルネットワークとディープラーニングで精度を上げてきた」(テレビ事業部 開発マネジャー 鴫原秀郎)という。

アイリスオーヤマの液晶テレビを前に、音声認識のデモを行う担当者
記者発表ではテレビ事業部長武藤和浩によるデモンストレーションも行われた。同社が言うようにスマートデバイスからの操作とは違い、レスポンスが良い

ここで筆者が些細なことに気づく。プレゼン用のマイクを通すと反応しなかったのだ。これは意外に重要なポイントで、非常にシンプルな言葉を投げかけるため、テレビ本体から「よんちゃん、見てね」のありそうなフレーズに反応する可能性がある。そこでいちいち反応していたのではリモコンの意味がない。機械音声と、肉声を、微妙に聞き分けている証拠だ。

あなどり難し、音声認識。
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文=坂元耕二

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